月舘町伝承民話集 -064/200page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

で、トヨ女の心のうちを聞いてもらうことにしました。おせんはトヨ女を呼び出して、心のうちを聞きただ しました。ところが意外にもトヨ女が口ごもりながらおせんに打明けたところによると、トヨ女には毎晩お そく一人の美青年が訪ねて来て、しばらく遊んで行くうちに深い関係になって、結婚の約束もしていたこと を告白したのでした。しかしその美しい青年は、名も言わずどこの者とも言わないので、トヨ女は心配で夜 も満足に眠れないとの話でした。ことにその青年は美しい肌(はだ)をしているがとても冷たい感じで、笑う時は凄 いまなざしなので気がかりでたまらないとのことでした。おせんはトヨ女の話を聞いて何だか恐ろしい気持 になりました。そして二人で相談して、その青年の身元をよく調べようということになりました。そこで今 夜来たらその青年に気付かれないように、青年の着物の裾(すそ)に糸を縫いつけておいて、翌朝になってから二人 でその糸をたぐって行けば、きっと青年の住み家もわかるだろうということになり、その晩青年の訪ねて来 るのを待っていました。

 やがて、その夜もいつものようにきまった時刻に、その青年がトヨ女の所に訪ねて来ました。青年はその 夜は今までになく青白い顔に何だか暗い表情をしていました。トヨ女は、青年が帰りかけた時何知らぬふり をして、青年の着物の裾にかな糸を縫いつけました。トヨ女とおせんは、翌朝その糸をたぐって行くと裏の大木の穴の中に消えて行ったので、二人はびっくりして顔を見合わせ、蛇の仕業(しわざ)であったことを知って今更(さら)ながら驚きました。その話を聞いた近所の人達は大勢集って来て、その穴に火をかけて焼き払いました。そ れからこの美青年は訪ねて来ませんでした。

 しかし、それからのKさんの家には次々に不幸が続きました。誰言うとなく「蛇のたたりで悪事が重るの


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は月舘町教育委員会に帰属します。
月舘町教育委員会の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。