ふるさと昔話 2 - 024/066page

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  忍者の話「蝶々の舞」

 

 昔、白雲(はくうん)という忍術使いがおりました。白雲(はくうん)は、忍術を使って悪い事をしておりましたから、とうとう捕まって今日は打ち首になる日です。
 お代官様は、「白雲(はくうん)よ、お前もいよいよ打ち首だ。この世ともお別れじゃーなあ最後になにか、いいのこす事はないか」と申されました。

 白雲(はくうん)は、しばらくだまっておりましたが、おそるおそる頭を上げて「私は忍術を使って悪い事をしてきた罰でいよいよこの世ともお別れでごぜーやすが、ただ一つ残念なことがごぜーやす。それは私が苦労して憶(おぼ)えた十八番中の十八番で忍術の奥儀というべき「蝶々の舞い」という忍術を使わずに死んでしもうことが、非常に非常に残念でごぜーやす」といかにも心のこりのようにハラ ハラと涙を流しました。

 これを見てお代官様は「ホホー それは残念だ。よしその蝶々の舞いというやつを、最後にやってみせよ」
「でも、忍術はこの世の御法度でごぜーやすので使うわけにはまいりません」
「代官の予が許すによって、早うやってくれ。皆の者、早々に準備をせよ」と申されましたので三十尺余の大竹が御役所のお庭の真中にまっすぐに五、六人のご家来衆によって立てられました。

 白雲(はくうん)は、白ハチマキにハカマのももだちをとり、白扇を二本両手に持ってスル スルと猿のように大竹を登り頂上に片足でスクッと立ちました。
 そして、両手の白扇をパーッと開きますと、足もとに紫色のうす雲がもくもくとおこりました。白雲(はくうん)はその雲に乗って、二匹の蝶々が花から花へ舞い遊び廻(まわ)るように、楽しそうに飛び舞い狂うのでした。
 その美しさと見事さにお代官様も、ご家来衆も皆々うっとりと見とれておりました。

 そのうち白雲(はくうん)が乗っていた紫色の雲が白い雲に変わると白雲(はくうん)は、「お代官様、皆々様大変お世話になりました。それではこれにて失礼いたします。」といって舞いを舞いながら、いづこともなく消え去ってしまいました。


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