てんえいむら見て歩き トラベルブック -062/064page

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民話 6  男神屋敷

男神山(おがみやま)の大天狗(だいてんぐ)

 妙見山(みょうけんやま)は、むかし男神山という。古老 の話しによれば、天正年間小川の妙見岳 より飛星(ひせい)があって、この山に落ちた。増 見讃岐(ますみさぬき)という者、これを見て山に登った ところ、小仏があった。よって妙見をこ こに安置(あんち)した。その後増見讃岐は不動院(ふどういん) と改号し、別当となり、以後一村の鎮守 となった。慶長三年本堂を建立してから、 妙見山と呼ぶようになった。
 大明神は何の神を祭ったのか、由来不 詳(ゆらいふしょう)の社があったので、これが山の名とな った。しかし、別の名を女神(めがみ)山とも言っ た。里人(さとびと)のことばに、天正の頃この神、 宇都宮に飛び移ったため、今は社跡(やしろあと)だけ が残っているという。(白河風土記参照)
 昔、松本は貧しい山峡(やまあい)の村落であった。 それと言うのも土地がやせ、何を作って もろくに稔(みの)らず、収穫は年々減る一方で、 よその土地の半分にも満たず、そこでこ の土地に見切りをつけ、よそに移り住む 者さえ続出するようになってきた。困り 果てた里人達は思案のすえ、男神山に祈 願をすることに一決。山峡にそそり立つ、 男神山を仰いでは、来る日も来る日も祈 願をつづけていた。月日が経(た)ってある日 突然、一天にわかにかきくもり、墨を流 したような、恐ろしい空模様となった。 底冷えのする風が吹いたかと思うと、ど こからか、大きな天狗が男神山にあらわ れ、対山(たいざん)の女神山にまたがり、体をふる わし、いきなり脱糞(だっふん)をはじめた。
 里人達は唖然(あぜん)となり、ただ天狗のしぐ さを、あれよあれよと見守るばかりであ った。天狗はいずこともなく煙のように 消えて行き、それはほんの一瞬の出来事 でもあった。
 以来、松本の田畑は豊かな農地と大き く変わり、したがって収益も倍増し、他 に見られぬ豊かな里になったという。

稿者 森忠一郎

「天栄村の民話と伝説から」

豊かな里になった絵


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