北会津の昔ばなしと伝説 -178/238page
45 麻生(あそう)の由来(ゆらい)
むかしむかし、三体地蔵さまを本尊としておまつりして、深く信仰しているお坊さんが、諸国巡礼(しょこくじゅんれい)の旅をしておりました。
あるとき、少し小高い丘の上に数戸の民家がありました。その部落のまわりは松林でかこまれ、西の方には、少し離れて大川が流れており、大変景色のよいところでした。が、民家のまわりには草が茫々(ぼうぼう)と生え、屋根の上まで草が長々と生えておりました。
その草やぶの中の家々から、うなり声や苦しい息づかいが聞こえてきましたので、このお坊さんは足を止め、どうしたのだろうかと、尋(たず)ねようとあたりを見廻(まわ)しましたが、外に出ている人が見あたりませんでした。
すると、ある家のかげから人々の話し声が、聞こえてきました。話し声の方に歩いて行くと、ヤタという人が住んでいたと伝えられる屋敷あとにある、俗にヤタの井戸といわれ