北会津の昔ばなしと伝説 -180/238page
願いしているだけなのです。お坊さま。どうか助けてやってください。お願いいたします。」
と、洗いものをしていた手をとめて跪(ひざまづ)き、合掌(がっしょう)してお願いしました。
「それはそれは、お気の毒なことだ。病人がどんなぐあいかみせてくだされ。」
「ありがとうございます。ありがとうございます。」
老婆は、しなびた腰を折りまげ、前にのめるような姿で、お坊さんの先に立って、急いで自分の家に案内しました。
お坊さんの立ったその家は、間口(まぐち)も狭(せま)く、とんぼ口のところには、土のついた鍬(くわ)や鎌(かま)が腰板にかけられ、ハケゴや笠(かさ)などが無ぞうさに置かれ、とんぼ口の片側には便所があり、その反対側には、馬小屋があるものですから、家の中からは異様な臭いが鼻をつきました。
とんぼ口の奥には、いろりがあり、そのまわりに病人が横たわっておりました。土間に藁(わら)をならべ、その上にむしろを敷いたところにセンベイ布団の病人がいるのです。
あぶら気のない髪は、ねぐせがつき、ほおはおち、身はやせおとろえた姿は、見るもあ