高郷村勢要覧 -007/035page
「たかさと」の個性は、太古の海の化石から。
利田付近の露出している凝灰岩
荻野岩(青石)の石切場
塩坪の河岸段丘
高郷村付近の地質時代のようす
ダイカイギュウの化石が眠っていたのは、村中央を蛇行する阿賀川の塩坪橋の川岸で、浸食河岸段丘の露岩。この塩坪は昔から、「龍の骨」が出たとか、「天狗の爪」が出ると言われてきました。
世界でも珍しい化石発掘!!『アイヅタカサトカイギュウ』
カイギュウは海牛目に属する人魚のモデル、ジュゴンやマナティーなどの仲間で、クジラ類に似てゾウの近縁。高郷村で発掘されたのは、1700年代までベーリング海に生息し、乱獲によって絶滅した大海牛の「ステラーカイギュウ」の先祖にあたる、太古の生物の化石と判明しました。
頭蓋化石が完全な形で発見されるのは珍しく、学術的にも非常に重要な特徴を秘めています。
塩坪周辺は化石の名所で、昭和55年(1980)にその保存調査中に標本を採取。古脊椎動物学会で新種「アイヅタカサトギュウ」と命名され、世界中からスポットを浴びるようになりました。
列島誕生の謎を秘めた海の化石と青石の地層たち。
クジラやサメ、アシカなど海に棲む哺乳動物のほか、巻貝や2枚貝などの化石が大量に埋れる塩坪層は、蛤石(はまぐりいし=浜栗石)の産地として、古くから世間に知られており、その貝殻の化石を砕いて飲用の粉薬とし、装飾塗料の胡粉に使われていました。
塩坪周辺の大地は浅い海底の砂岩層で、その深さは100メートルもあり、下半分が魅惑の貝殻まじり層。
阿賀川流域の荻野駅周辺は「青石」の産地として知られ、なんと深さ300メートルもの緑色凝灰岩層で占められているようです。
これらの地層は今から5百万年〜1,500万年もの昔に椎積したもので、緑は海草の色、凝灰岩は海底火山の噴出物が沈殿したものらしく、恐竜やアンモナイトが栄えたのち、激しい火山活動を伴なう隆起や降沈をくり返した、日本列島誕生の頃の数千万年、数億年の壮大なドラマの1コマを物語っています。
会津地方には、この海底の地層である緑色凝灰岩=グリーンタフが広く分布しております。
郷土の宝物たちに「高郷らしさ」を学ぶ。
二十一世紀は「郷土らしさ」を愛しむ時代。
わたくしたちは、地球博物誌の珍重な資料とのめぐりあわせを大切にし、太古の生命が眠る郷土の大地の温もりを肌で感じとりながら「進化論」という偉大な思想を育んだ心豊かな地質時代の英知に思いを馳せ、未来を拓く郷土づくりの多彩な知恵を学びます。
アイヅタカサトギュウの化石標本
学名は「ドンシーレン・タカサテンジス」。体長は3.7mと推定される。カイギュウの仲間は5,500万年前から海に生息するようになった草食のほ乳動物で、高郷村で発掘された化石は、今から800万年前の種のようです。