西会津町勢要覧 -011/022page
自分が作った桐ゲタは、どこの店に置かれていてもわかります。
西尾容典さんの仕事場を訪ねたのは、秋たけなわの頃。午後の柔らかな陽が差し込む仕事場はシンと静まり返り、カンナの音だけが心地よく繰り返されていた。西尾容典さんはこの道28年のベテラン。西会津町でも数少なくなった桐職人の一人。
「毎日ここに座って桐ゲタをつくります。慣れた仕事ですが、一足一足、仕上がりのことを考えながら新たな気持ちで作っているんです」と西尾さん。
桐はまず年輪によって価値が決まる。目の詰まった美しい年輪ができるのは、夏と冬の寒暖の差がはっきりしている西会津町の盆地特有の気候が育むもの。西尾さんの仕事は、原木を自分の目で見定め買い取るところから始まる。そして原木からゲタの大きさに切り取る時に、木目の善し悪しが決まる。一本の桐の原木から無駄なく左右のゲタ材を取っていくが、ぴったり左右対象に取れたところは珍重され、これが柾目のゲタという。
「柾目のゲタを手掛ける時は、やっぱりうれしいですね。いい素材だからこそ、もっともっと素晴らしいゲタに仕上げようと思います」と目を輝かせる西尾さん。自分が作った桐ゲタは、どこの店に置かれていても、すぐにわかるという。
西会津町の桐下駄は、西尾さんをはじめ熟練の職人の心が込められた手作り。ひと足ごとに、からんころんと、ここちよい鼓動が伝わってくる。