あいづばんげ町勢要覧 -010/034page

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街道の軌跡

享保年間(1716〜1736)といえば南山 お蔵入り騒動のあった 時代であ る。厳し い時代背景 の中で農民は極め て苦しい生活を余 儀なくされていた 時代であった。こ のような時に建て られた本百姓の民 家が、幸いな ことに会津坂 下町中開津に 完全な形で 残っていた ことは奇跡 に近いこと であった。 それが旧五十嵐家住宅である。

 この旧宅は解体消滅の運命にあっ たが直前の調査によってその歴史的 価値が認められ、急遽、移築保存さ れることになったのである。解体の 際にホゾから発見された墨書には享 保十四年(1729)とあって、歴 史的・民俗的に極めて貴重なもので あった。

 旧宅は昭和四十四年、中開津から 塔寺の心清水八幡神社境内に復元移 築し、一般に公開しながら永く保存 されることとなった。昭和四十六年 にはその価値が認められ、国の重要 文化財に指定された。

 移築に際しては、原型に忠実に復 元するように配慮がなされた。すな わち解体した古い材料を可能なかぎ り使用する。柱・板壁材・貫材・補 強材はできるだけ旧形・旧工法に従 って建築する。補強にも、柱などの 新材は旧材と同種・同質のものを使 用する。そして構造手法・継手・仕 口はすべて旧形と同じ施工方法をと り、左官工事や土壁、屋根工事に至 るまで従来の工法をとつて、入念か つ慎重に復元している。

 旧五十嵐家住宅の復元規模は、桁 行八間半・梁行三間半。直家(すごや)の木造 平屋建て、前背面下屋付き土塗真壁 作り、扠首(さす)組・茅葺き寄棟で南面し て復元されている。内部には「ニワ」 と呼ばれる作業場のタタキ土間や風 呂場なども当時のままに復元されて いる。

 現在は旧宅に民具、民芸品など貴 重な民俗資料が数多く保存されてい る。

 遥かな時空を超越した古民家のた たずまいの中に、言い尽くせないほ どの凛とした風格が漂い、歴史の重 さを今に伝えている。

静かな山里に消え残る

重要文化財にも措定されている旧五十嵐家住宅は、
会津地方の本百姓の代表的な家屋構造をなし、
その原型を現代に伝える極めて貴重な遺構である。
多数保存されている民具類と、素朴な家屋のたたずまいに
当時の農民の生活様式をうかがい知ることができる。

旧五十嵐家では、民具などの民俗資料を保存している。
1.旧五十嵐家では、民具などの民俗資料を保存している。

五十嵐家を見守り続けた「神棚」
2.五十嵐家を見守り続けた「神棚」

入念に仕上げられた扠首組
3.入念に仕上げられた扠首組

いにしえの会話が、聞二えてくる囲炉裏
4.いにしえの会話が、聞二えてくる囲炉裏

五十嵐家の生活を語る「だるま」
5.五十嵐家の生活を語る「だるま」

6.旧五十嵐家住宅


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