鮭立磨崖仏 - 046/135page
F-@ ― 不動明王(ふどうみょうおう)
明王とは、如来や菩薩のやさしい姿では従わない強情な人たちを、威力で従わせて救うほとけさまです。
不動明王は大日如来の化身(教令輪身)とも使者ともいわれ、五大明王の中尊、つまり中央に位置して尊ばれています。修験道では宇宙の根本仏である大日如来の化身としてあがめられ、本尊としてまつっています。行場や滝の近くには必ずあるようです。鮭立の磨崖仏群中でも中心に位置しています。
不動明王については、『私の身を見るものは菩提心つまりさとりを求める心をおこし、私の名を聞くものは大智恵を得ることが出来、私の心を知るものはそのまゝ成仏するだろう』と説かれています。
不動明王の威力については、ほとけの命に従わない大自在天をこらしめる話があります。
慢心している大自在天を七回とらえてついに屈伏させたというのです。ちなみに大自在天はインドの神の王でのち仏教に入ったとされています。
また二宮尊徳が野州(今の栃木県)桜町の復興事業を始められたとき、成田山の不動堂におこもりして堅い決意をもって事業にあたり、ついに成功させたという話があります。
鮭立の磨崖仏は迦樓羅鳥(かるらちょう)という、鳥の姿が見える火炎光(迦樓羅光といいます)を透かし彫りにして、その中に宝剣と羂索(けんじゃく)つまり縄を持った不動明王を彫刻しています。