鮭立磨崖仏 - 090/135page
― 愛染明王(あいぜんみょうおう)
昭和十年代に、愛染かつらという映画が大ヒットしました。愛染という言葉はよく小説やドラマの題名に使われますが、愛染明王は小説のロマンチックな感じとは違う恐ろしい姿をしています。明王ですから仕方がないのでしょうが、内心は外見と違ってたいへん愛情の深い明王とされています。全身が真赤なのは深い愛情を示しています。目が三つあるのは三界、つまりあらゆる世界の衆生をみるためです。真紅の光背はまよいの闇を照らすためといわれています。蓮華座の下の宝瓶には多数の宝が入っています。人間は迷いがあるから悟りがあるのであって、愛染明王はその迷いを迷いとしてうけとめて、それを悟りの方向へみちびく明王とされているのです。
愛染明王は愛情のほとけとして特に女性に信仰されて、恋がまとまるようにとの願いをうけ、縁結びにつとめる明王として知られています。また染色業者からも深く信仰されています。
獅子冠をつけ、手は六手で、弓、矢、拳印、杵、鈴、蓮華をもっているお姿です。光背や左右の手などには赤い塗料が残っていて、製作当時のおもかげをしのばせます。
会津では、まだ他には見つかっていないようです。