鮭立磨崖仏 - 118/135page
― 九頭竜権現(ぐずりゅうごんげん)
竜神は水の神として知られています。八大竜王の一員、和修吉(わしゅきつ)竜王は頭が九つある竜神とされています。
水は稲をはじめとして農業にはなくてはならないものですが、洪水は恐ろしいものでした。鮭立を流れる山入川は、現在では護岸ができ川幅も広くなってよくなりましたが、以前は雨が続くと普通の何倍もの水かさとなって流れ、大きな岩さえも押し流す暴れ川でした。昭和四十四年の大洪水では、田畑ばかりか人家人命にも大きな被害をうけ、鮭立の上流にあった大又地区は、集落ごと移転しなければならないようになったことは忘れられないことです。
竜神には、洪水がおきないよう、また、ひでりのときは雨を降らせてもらうようにと祈りました。
竜王の口には赤い塗料が残っていて、彫刻の技術のよさとともに製作当時をしのばせています。九頭竜権現は県内では他に見当たらないようです。