鮭立磨崖仏 - 120/135page
― 深沙大将(じんじゃだいしょう)
玄奘三蔵は、前後十六年をかけてインドヘ行き、お経を唐へ持ち帰った高僧です。古代のシルクロードの砂漠の道はたいへん危険な旅でした。その砂漠の道は、空には飛ぶ鳥も見えなければ、地上には獣とていない、砂あらしにあえば誰も助からない、ただ広々とした砂漠で道しるべになるものは死んだ人の骨だけだった、と記されています。この砂漠をわたる玄奘三蔵を往きも帰りも守護しはげましたとされるのが、砂漠の神の深沙大将です。多聞天の化身ともいわれ、砂漠にいて、病気や災害、盗賊の害を防いでくれるとされています。お寺で行われる大般若会では般若十六善神の仏画がかかげられますが、深沙大将は玄芙三蔵の隣に位置しています。
お姿は鬼神のかたちで、武器や鉢または蛇をもっていますが、鮭立の磨崖仏は蛇を持ったお姿で、肩に大蛇をかつぎ胸の前で両手で支えています。昭和初期には青く塗られた蛇のうろこの色がみられたそうですが、いまは風化しています。
深沙大将の石仏は全国でも珍しく、大分県の臼杵石仏群の中に一体あるのが知られているだけのようです。