鮭立磨崖仏 - 122/135page
― 閻魔大王(えんまだいおう)
閻魔帳というと先生が生徒のことを書きこんでおく手帳で、こわいものでした。会社の勤務評定表というのも閻魔帳の一種でしょう。閻魔帳とは閻魔大王が死者の生前の罪を書きとめておく帳簿です。
閻魔は死者の生前の行いを判定する判事役の十王の一員で、その長官つまり裁判長の役目をつとめるものとされています。人が生れると倶生神(くしょうじん)というのがついていて、その人の善悪の行いを記録しその人が死ぬとその記録を閻魔に届け、閻魔は倶生神の届けた記録を読んで死者の行先をきめるというわけです。
恐ろしい顔をしているのが普通ですが、地蔵菩薩の化身だという説もあって自分で罰をきめた亡者を救う方法も考えているのです。刑罰は罪の報いとして与えるのでなく、こらしめてよい方向へ導くためという、今でいう教育刑主義者なのです。
鮭立の磨崖仏は、閻魔大王としてはやさしい顔をしています。