秘境檜枝岐 - 009/013page
御行塚(おぎょうづか)……………旅の僧呂、専海の墓じるし
語り伝えによると、五穀を断って諸国を遍歴している一人の僧呂が村を訪れたことがあったが、その時はすでにそば粉を水でこねて一日に一椀食べるだけで更に“十穀断ち”“木の実断ち”となりついに水だけしか口にしなくなりやがて村人に自分の死を予告した。村人は僧呂の言葉に従って檜の棺を作りその中に安座させて竹筒で息抜きを作り土の中に埋めた。僧呂は棺の中で鉦(かね)を打ち続けその音は二十一日間も村人に聞こえたということで、村人はその場所に塚を築き、桜の木を植えてその根元に卵形の石碑を建てたということである。その石碑に専海という文字が刻まれているのをみると旅僧の名前であろうと思われる