教育福島0047号(1979年(S54)12月)-005page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

巻頭言

 

西ドイツの民泊から

 

福島県教育庁県中教育事務所長 高坂 啓作

 

もに国際親善と国際的視野を豊かにするための研修に参加してまいりました。

 

去る九月九日から二十三日までの十五日間、福島県若人の翼Bコース(東西ベルリン・西ドイツ・イタリア)の団長として、三十二名の団員とともに国際親善と国際的視野を豊かにするための研修に参加してまいりました。

限られた日程と一部の人々との接触のなかで感じたことなので、「葦のずいから天井のぞく」のたとえの域を脱しないかもしれませんが、強く印象づけられたことがたくさんあります。そのうち、西ドイツの民間家庭を訪問して感じたことを述べてみます。

●その一 西ドイツでは、主人・奥さん・子供は、それぞれ自分の友人・知人といった人々を自由に家へつれてくるようです。その場合特別の接待をするわけではなく、「ワインを一ぱいどう」という程度で、全く気軽に招いたり、招かれたりしています。子供は、小さいうちから、家の居間は、知人・友人・または全く知らない人にあう場所であると自覚し、家が社会的交流の場として教わり、家庭内で始めて世間を知るのだそうです。団員A君が宿泊したぺーター氏宅は、奥さんと三歳のパウル君の三人家族でした。不安と期待の交措する心境でぺーター氏宅についたA君は、さっそく喫煙しようとしたら、家の中では禁煙なので、庭にでて灰皿のある所で喫煙して下さいというのです。その理由は、子供の健康管理のためだと真剣に説明し、あなたは私の家に来たら、私の家のきまりを守ってほしいというわけです。言うことは厳しいが、心から日本青年を歓待してくれたのでした。日本だったら、せっかくの来客だからということで、そのままにしてしまうようなことはないでしょうか。

●その二 コンラッド氏宅には、団員Y君が宿泊しました。奥さんと子供二人の家庭でした。私も通訳さんとともにお伺いし、家族全員と教会へ行って帰る途中での話です。アニタという五歳の女児が、公園に咲いていた花を折ろうとして両親に注意されました。

なぜ公園の花をとってはいけないかを、夫婦で子供にわかるように説明しているのです。子供は、子供なりの意見を述べる。また親が説明する。何度か意見の交換をしてから、子供は納得しました。民泊が終わってから団員と話をしたら、これに類する例がいくつかでてきました。ドイツ人は議論好きといわれますが、このような態度は、子供の時代から身につけていくように思われます。親や先生に注意されても納得できないと、「なぜ」と問い返す。そのしかたが、論理的である。親は、納得できるよう根気強く子供と話をしていく。こうして納得したことは、もう注意しなくても守るそうである。わが国の家庭教育や学校教育においても禁止や注意だけでなく、発達段階に応じて納得させる説明や話し合いが、もっと取り入れられてもよいのではないかと考えさせられました。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。