教育福島0070号(1982年(S57)04月)-046page

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ふるさと探訪

県指定重要文化財(建造物)

安洞院多宝塔一棟

所在地 福島市山口字文和摺七十番地

所在地 福島市山口字文和摺七十番地

所有者 安洞院

所有者の住所 福島市山口字寺前五番地

明治四十一年(一九〇八)にまとめて刊行された寺伝の記録によると、文化九年(一八一二)二月、安洞院八世光隆和尚の建立と伝えられ、明治十七年に現在の銅板ぶきに改められた。棟梁は、地元山口村の藤原右源次と口伝され、付近の寺院本堂のいくつも手がけていたらしい。

小型の塔で、小さい起りをもつ亀腹とこれに重ねた上層の塔身などは在来の多宝塔形式をそのまま備えるが、初層の正面に付けられた唐破風や、請花を省略して竜車を立方体とした相輪などには、この塔独特の工夫をみることができる。

腰に和様、軒尾樺に禅宗様を採り、初層軒は三手先、上層は深く四手先を数えて詰組とし、初層縁廻りに付した擬宝珠付勾欄も一手先の腰組で持ち出すなど、全般に入念かつ安定を志向した構法が採られている。破風や支輪・軒裏小天井などの表面は浮彫で埋め、頭長押から上はすべて着色を施し、木鼻の類は象頭と獅子頭を交互に用いるなど、派手な装飾で構成されているが、現在の配色は昭和三年の塗替である。

内部は正面の二本の来迎柱の間に禅宗様須弥壇をおいて、金剛界五智如来を祀る厨子を安置する。天井は絵様を施した格天井である。

なお、多宝塔遺構は畿内には多いが、関東以北には十棟内外、東北にはこれ一棟のみである。

現状は礎石、腰組が若干乱れているほかは、維持良好である。


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