教育福島0076号(1982年(S57)11月)-046page

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ふるさと探訪

 

県指定重婆文化財(彫刻)

木造阿弥陀如来坐像  一◆

 

形式化するが、腹部と両膝の表現には古様(両袖から手先は後捕)も見られる。

 

寄木造り、彫目、素地仕上げ。宝髻低く、螺髪は小粒で丁寧に整えられるが、一列目は下方を向く。面貌は口唇に微笑を含み人間臭いところに特徴がある。衣文の彫刻はやや形式化するが、腹部と両膝の表現には古様(両袖から手先は後捕)も見られる。

胎内には次の墨書銘がある。

「      蓮光房

大才  西阿弥陀仏

嘉元三年

きのとみ 貮月十日

善阿ミた仏」

明らかに鎌倉未期の件であることを示している。ことに西阿弥陀仏、善阿弥陀仏という名称は、時宗遊行上人系の彫刻であることを想像せしめて興味深い。元来は多分、薬師寺隣りにあった教林寺のものであったろう。教林寺は『異本塔寺長帳』に建久九年(一一九八)「会津田島揚貴山教林寺ヲ長沼政則室揚貴尼建立」とあり、また『新編会津風土記』には「時宗養貴山と号す。相模国藤沢清浄光寺の未山なり、開基詳ならす、何の頃にか覚阿弥と云僧中興すと云、本尊弥陀長二尺二寸恵心作と云客殿に安す」とある。本像はこれに当たると思われる。

 

〔像高 八三・八センチメートル 所在地 南会津群田島町大字田島字本町甲三八七二番地 所有者 薬師寺〕

 

 

 


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