教育福島0117号(1986年(S61)12月)-051page
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世界の教育は、今。
海外教育事業の紹介
体験学習と課題学習を重視
−フランス−
フランス北西部、ヴァルトクーズ県セルジーボントワーズ市を中心に、リセ(高校)二校と国立教員養成センターを視察した。
フランスの中等教育機関リセは、日本普通高校に当る普通リセと、職業高校にあたる職業リセの二つに大別されるが、いずれも入学試験はなく、最初の一年は義務制でもある。しかし、卒業資格(バカロレア)の認定は厳しく、取得率七十パーセントと日本のそれとはいささか趣きを異にしている。
訪問した二校の学習指導方針は、肌で感じとる「体験的学習」と、徹底した「課題学習」にあり、印象深いものかあった。
創立まもない最初の訪問校、サンクリフトフ高校では、校内に画家、彫刻家・陶芸家など六人の芸術家を住まわせ、あるいはアトリエとして開放しており、生徒はこれら芸術家の日常の創作活動を身近かに感しなから、芸術に対する関心や理解が深められるよう配慮されている。また、同校の経済・経営コースの学習においては、銀行協会の資金援助により、かなりの額の株券や債券を購入し(経済のしくみを学習するとともに、その売買益金をマイコンや各種教材の購入興用に当てられているということであった。
フランスで二番目という、歴史のある二つ目の訪問校ギスターブモノ高校(工業系リセ) では、少人数による徹底した課題学習が行なわれていた。課題の設定・設計から作品の完成まで一年間を要要し、製作に必要な情報の収集のため企業や研究機関の訪問も多く、これは比較的自由に行なわれている。完成後の作品は「技術バカロレア」認定の重要な資料となるとともに、この種の学習成果をもとに進路の選択が行なわれることが多いという。
フランスに限らず、欧米諸国に見られる少人数の学級編成と、開放的な学習形態は、今後の学校教育を暗示するものがあり興味深いものであった。
国立教員養成センターでは、小学校の現職教員を対象とした「マイコン操作」の研修中であったか、日本の科学技術教育についての矢継ぎ早の質問には、急激に進む情報化社会への戸惑いを感じさせるものがあった。
現在フランスでは、教育制度全般の見直しか進められており毎年二、三の小改革が実施されているが、たしかに都市部における風紀の乱れば、この国の教育が抱えている問題の根源さをうかかい知ることができる。
昭和六十一年度文部省海外派遣長期第十六団
県立白河実業高等学校教諭 小林周作
視察団に質問する研修中の小学校教員 (フランス)
校内で創作活動中の画家 (サンクストフ高校)
課題設定の指導を受ける生徒( ギスターブモノ高校)
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