教育福島0121号(1987年(S62)06月)-047page
世界の教育は、今。
海外教育事情の紹介
異質との出逢い…「宝」
-カナダ・アメリカ−
生きていくのに「人とのめぐり逢い」が宝であるとすれば、この研修をすることで、私はあまりにもたくさんの宝を一度に手にしたことになる。
個を尊重しつつ、カナダらしく
古都ビクトリアで、みぞれの中に咲く薄紅の四季桜と北太平洋の水面に砂海と響くカリロンの音色で、十六日間の旅が始まった。
外気は零下、校舎内は完全暖房。創意あふれる掲示物、多角形の教室、カラプルなロッカー、教室、ジム、その中で活動する子どもたちの顔は明るい。仏系・英系・中国系・日系・独系、さまざまな民族がいる。祖先を異にし、文化を異にし、生活を異にする多様な生徒の一人一人を、より深く理解するための「カウンセリングシステム」(授業を担当しない専任のカウンセラーによる)はすばらしい。また、母国語として英語と仏語、そのほかに第二母国語として日本語・中国語など、国際理解親善への意欲もみられる。
バンクーバー市の教育長は、オーストラリア人。選挙制で選ばれるとはいえ、異国籍の彼が教育長として敏腕をふるっている姿は、異民族を寛容し、かつ、カナダ独自の国民性を育んでいこうとする象徴である。
そして、その心意気は、キモノを着て視察訪問した私への過大なまでの賛辞とほほえみで実感した。
合唱部の高校生たちと(アメリカ`ジョンディキソソン高校)
人種のるつぼ、されどアメリカ
マンハッタン島に浮かぶ巨大な世界一の都市空間ニュー-ヨークは、まさに人種のるつぼである。ありとあらゆる人種の文化も生活ものみこんで、アメリカという国は大きくうねりながら歴史の大河を流れていた。ニューヨークからメトロライナーで南へ一時間四十分のウィルミントンの町で、六つの学校(小・中・高)を訪問した。
花束を手に手に笑顔で迎えてくれた子どもたちの心が嬉しい。
広大な校地、学校という概念を上まわるすばらしい建築物、コンピュータールームなどの超近代的教育機器、オートメーション化された事務室、まさにアメリカである。
また、軽快な音楽を流しての絵画・美術の授業、自己表現力を高める演劇の授業、能力別クラス編成によるきめ細かな指導、それらを受ける生徒の真剣で私語の少ない授業は、マスコミを通じて描いていた自由奔放な姿とは異なっていた。教育界には女性の進出も多い。学校長をはじめ要職にずらり。そして、彼女たちが母であり妻であることが良い。
「オオ!キモノ!ビューティプル、ベリーファイン!」「エレガンス!」これは異国で着物ですごした私の「自分らしさへの試み」への賛辞として大切な「記念としたい。
異質との出逢い……想い出今なお鮮烈。
4〜5歳児と「さくらさくら」を歌う
(カナダ`バンクーバ小学校)
昭和六十一年度文部省海外派遣短期第七十二団
いわき市立内郷第一中学校教諭毎聞香保子