教育福島0125号(1987年(S62)10月)-055page

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世界の教育は、今。

海外教育事情の紹介

住民の意志を生かしながら心の教育を重視

スイス

学校訪問から

ランゲンタールには、小中学校が三校ある。訪問校エルツマット小中学校には、生徒数二百二十三名、学級数十七室、教職員数二十三名、校長は市の教育委員も兼務している。主な学校行事は、体育祭、遠足、五月散歩、廃品回収、日帰り旅行等がある。上級進学率は九十パーセントである。

一学年から三学年までは、総合教育が中心になり担任は女性ばかり、四学年から九学年までは、専科制であり担任は男性が多い。この制度は住民の意志によるのだそうだ。学校は校門やフェンスもなく緑一面に囲まれ、中に校舎があり、校庭は、全天候グランドと芝生でおおわれている。

学習では、一人一人の自主性を重んじ、自己表現力をつけ創造力・判断力のある子どもを育てるために教師一人一人の個性豊かな指導がなされていた。「読み書き」の授業では、頭と体と心を学習過程に生かしていた。一つの発問から記憶力を高め、集中力をつけさせ、理論的に話せるよう学習の仕方を育てている。頭で知ったことを体で表現し実践している。理解の遅い子には手助けする心を育てる学習をしていた。

給食調度はなく、軽食を持参し休憩時間に食べるのだそうだ。それにチリ一つ落ちていない。「チリを拾うより、捨てないことがさらに大事」という教育が大切であると先生が話していた。

「読み書き」の学習にも頭と体と心を生かして

「読み書き」の学習にも頭と体と心を生かして

教育制度について

一、各州が独自の組織で教育政策を推進させ、住民の教育要求に基づいた学校教育が推進されている。

二、教職員の人事異動はない。

三、教員の任用は、六年ごと市議会の投票によって選ぶ。

四、教員の採用は、市教育委員の面接と市議会で決定する。

就学教育は、五歳児を対象に遊びを通して自己の表現力と創造力を育て、日常生活に適応できるような幼稚園教育が行われている。

義務教育の中で、初等教育は一学年から四学年、中等教育は五学年から九学年の二つに分けられている。原学年留め置き、一学年の途中で幼稚園に戻って学習をし直す制度もある。

初等教育は、母国語の知識と算数・地理の基本を教えている。歌唱・図工を通して、児童の芸術性と創造性の発達を促すこと、そして体育、さらに社会行動の修得が目的だ。中等教育は、四年生で文学課程、実業課程、一般課程に分ける選抜テストを受け、児童の多様な能力や適性に合った課程で、個に応じた教育を受けることを目的に編成される。

この訪問で印象づけられたことは、学校では、児童の個性を尊重し、一人一人に合った教育、家庭では、奉仕の精神と自然を愛護する心の教育がよくなされていることだった。

昭和六十二年度文部省教員海外派遣第三団

いわき市立永井小学校教諭 佐藤 敏正

明るい表情の子どもたち

明るい表情の子どもたち


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