教育福島0135号(1988年(S63)11月)-051page

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教育福島0135号(1988年(S63)11月)-051page


世界の教育は、今。 海外教育事情の紹介

ギムナジウム

充実した施設で真剣に学習

−スイス−

スイスのソロッツルン州では、六年間の初等教育を終えた後、四種類の中等学校へ進学することになる。小学校の先生は、児童の能力や興味・関心に応じて、その子に一番合う学校を勧める。親も子も納得して進学するため、どの学校へ行くことになっても、そのことにはこだわらない、という。

オルテン市にある州立カントンハルドワルド校。八年制ギムナジウムである。一九八四年の設立で、まだ新しい。三人の校長が運営する。教員は、講師を含めて百十七人。生徒数七百九十五人・適性や進路の希望により、文系、理系、教員養成、経済学部門、商業部門、公共奉仕部門の六コースに分かれる。四十四学級で、一学級十八〜二十二人。授業は四十五分単位である。

七年生の生物の授業を参観する。生徒数は十九人。タイトルは「ダーウィンの進化論の前提」である。先生は、重要なところを黒板に箇条書きし、掛図を利用する。古生物の進化の過程の説明であるが、教科書らしいものは見当たらない。ユーモアを交えながらの講義で、生徒は真剣に聴き、丹念にノートをとる。

求められる心の豊かさ

音楽を聴きながらの読書も………

ゆとりある校舎の一角に、図書館があった。二万冊を蔵する。新聞・雑誌が約二十種。ディスクは二千枚を超え、クラシックからモダンジャズまでがそろう。一万枚のカラースライド。備えつけのビデオは館内で見られる。生徒は、読書をしながら音楽を楽しむこともできる。閲覧用の机には、ニチャンネルのBGMが流れるヘッドホーンが備えつけられているからだ。そこは、憩いの場としての雰囲気も兼ね備えていた。

この日は校長先生が三人とも出張中とのことで、フランス語担当のピータハンス先生から、学校についての説明をいただいた。続いて質疑の時間。教科書について州からの指定はなく、教科会議で決定する。週当たりの担当授業時数は二十五時間。教授法は担当者にまかせられている。しかし、外部の試験官が実施する卒業試験にパスできる学力を生徒に身につけさせねばならない。それで教師の指導力が問われるのだ。

生徒は学校で八時間学習する。家庭での学習は一〜二時間。塾のような所へ通う者はいない。教室を予約しておいて、成績の良い生徒が不得意な生徒を教えたり、上級生が下級生の面倒を見たりする。

モダンでユニークな作りの校舎のロピーで、親密そうなカップルを見かけた。「異性との交際は自然なことであり、むしろ好ましいことである。生徒の自覚に任せてあるが、エスカレートする心配はない」とのこと。

ギムナジウムを卒業した生徒は、その希望によって、スイス国内の十大学(単科大学を含む)へと進学する。しかし、特定の大学に集中することはないらしい。

昭和六十二年度文部省海外教員派遣短期第七十一団

県立南会津高等学校 校長 渡部光明

図書館のビテオコーナー

図書館のビテオコーナー

図書館でBGMを聴きながら………

図書館でBGMを聴きながら………

生物の授業風景

生物の授業風景


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