教育福島0145号(1990年(H02)02月)-047page

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海外教育事情の紹介

世界の教育は今。

充実したスポーツ施設

−西ドイツ−

日独スポーツ少年団同時交流派遣団として、東北IIグループは団員七名と共に西独のフランクフルトより北部地区を訪問した。日本団員百二十五名が、「青少年と余暇」というメインテーマで各グループごとにサブテーマを持ち、小さな街大きな街をホームスティしながらの研修であった。東北IIグループの活動はニーダーザクセン州のフリーゾイテという小さな街から始まった。日本人が初めてというこの街では市長さんはじめ街中の人たちが歓迎してくれた。討論会、学習会、スポーツ活動といろいろな交流を通して感じるものすべてが新鮮であり、学ぶこともたくさんあった。私たちが交流したドイツスポーツユーゲントは日本でいうスポーツ少年団であり、地域のスポーツクラブなのである。学校での部活動はほとんどなく、子どもたちは家へ帰って昼食をとり、午後は各自スポーツクラブで汗を流して後は自由時間となる。老若男女を問わずスポーツ界は地域のスポーツクラブが支えている仕組である。そのため、どんな小さな街でもスポーツ施設が整っているのには驚かされた。生涯スポーツがどこの街にいても出来ることはすばらしいと思った。しかし、これほどまでにスポーツ施設が整っていても、現在の若者はお金のかかるスポーツ施設へ流れる傾向があり、悩みのひとつになっているそうだ。スポーツを指導する人たちにとっては寂しい光景だが、すべての人が競技スポーツを目指すとは限らないことからレジャー的要素が好まれるのはどこの国も同じようである。

西独では六歳から十六歳までが義務教育となり、小学生四年間、中学生六年間となっている。小学校をグルントシューレといい、中学へ進む時に次の三つのタイプの中から一つを選択する。すなわち、ハウプトシューレ(基幹学校)から、専門学校へ、リアルシューレ(職業学校)から専門学校又は高等学校へ、ギムナジウム(進学学校)から高等学校へ進む三つのコースで、この時点で将来の進む道がほぼ決まると言われている。

「伝統と人間味を大切にする生き方」

小学校を見学した結果、日本と特別変わっているところはなく、強いて言えば、職員室の机の上には教材も何も置いてないこと、ネクタイ姿で教壇に立つことはないことなどである。また、大学見学では、最新のシステムやすばらしい設備、建物にも工夫のされた大学であるとの説明を受けたが、学生が言うには「学問をするにはとても冷めたすぎるよ」ということだった。昔ながらの建物を好む習慣や風習に誇りを持っているのには感心させられた。同じ戦後史を持ちながらも、彼らの「伝統を守る生き方」と、私たちの昔を省りみず「新しいものばかりを取り入れる生き方」の違いを見たような気がした。私はこの研修を通して人間味のある生き方の大切さを特に感じた。家庭の躾でも拳骨は飛ぶし、用件を頼むのには代償を与えない。子ども扱いをせず一人の人間として意見も尊重するなど、寛大な生き方をしている西独の人々の生活振りが強く印象に残った。

第十六回日独スポーツ少年団同時交流派遣団

指導者 太田清実(勤務先 平田村中央公民館)

ハンブルク市内で日独のスポーツ少年たちと(前列中央が筆者)

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ハーヘン市のスポーツシューレ(施設)での交歓練習

ハーヘン市のスポーツシューレ(施設)での交歓練習


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