教育福島0172号(1993年(H05)07月)-004page
企画展案内
生誕百年木村荘八(きむらしようはち)展
会期9月11目(土)〜10月17日(日)会場県立美術館企画展示室
大正から昭和にかけて活躍した洋画家木村荘八(一八九三〜一九五八)は、多芸多才の人で、本業の油彩だけではなく様々な領域で重要な仕事を遺しました。<ヒュウザン会>や<草土社>など、大正期前半の革新的な美術グループに加わった個性的な画家であり、海外の美術書を積極的に翻訳紹介し、同時代の人々に美術の知識を提供するという役割を果たし、やがて芝居や花柳界などの日本の伝統的な世界を油絵や日本画で描いた画家という顔ももつようになりました。また、刻々と変貌していく東京という都会とそこに現われる風俗を、絵と文章によって克明に記録した人でもあり、晩年の著作『東京繁昌記』は芸術院賞恩賜賞を受けています。よく知られているのは挿絵画家としての顔でしょう。永井荷風の『◆東縞譚』や舟橋聖一の『花の生涯』をはじめ数多くの名作を遺しています。さらに、歌舞伎の舞台装置の考案や映画の美術考証の仕事、趣味の世界では小唄の師匠としても知られています。
生誕百年を機に開催するこのたびの展覧会では、美術、文学、演劇、映画などにまたがる幅広い活動を繰り広げた近代美術有数の才人木村荘八の仕事を、その油彩両を中心にご紹介します。
▲「パンの会」1928年
▲「壼を持つ女」1915年
▲「犬鷲神社祭礼」1943年
▲永井荷風作「◆東縞譚」さし絵1937年