教育福島0196号(1996年(H08)07月)-013page
善していくことが必要である。
そこで、次のような点に留意して単元(題材)の学習を設計することが望まれる。
(1) 四観点からの学習指導の設計
基礎学力を向上させていく授業では、思考力、判断力、表現力を発揮する学習の中で知識・理解、技能を獲得していくことが大事になる。
そこで、観点別学習状況の評価の観点を重視して単元(題材)の学習を設計していくことが大切になる。
(2) 既習の学習内容や学習方法を活用する学習指導の設計
基礎学力の基盤となる知識・理解技能は、適所で的確に活用することによって広がり、深まりをもってくる。
そこで、児童生徒が前単元(題材)までの学習で身に付けた学習内容や学習方法の実態を分析し、単元(題材)のどこで、どのように活用できるか構想することが必要である。
(3) 基礎学力の確かな定着や発展を図る学習活動の設計
定着が十分でない児童生徒にはじっくり取り組むことができる練習活動、目標を達成した児童生徒には足踏みさせることなく、新たな目標に向かって取り組ませる発展的学習など、定着の練習活動と発展学習を組み合わせたまとめの学習活動を工夫することが大切である。
(4) 教材活用の設計
単元間の関連や単元の重点的な指導目標が明確になってくると、主教材である教科書教材を中心に具体的な学習内容の検討・吟味が大切になる。特に、学習目標との関連から教材のどこを、どのように活用していくのか、構造的にとらえることが大切である。
5 基礎学力を高める学習指導
基礎学力を高めるには、思考力、判断力、表現力を働かせ、知識・理解・技能を獲得していく学習とそれらを様々な学習場面で的確に活用していく学習をバランスよく配置していくことが大切になる。
(1) 指導過程のポイント
ア 前時までに身に付けた知識・理解、技能や学習方法の成果を十分に活用して、教科の本質を踏まえた動機づけを重視する。
イ 学習課題を明確にして学習の方向性や方法、手順等を把握させる
ウ 一人学びの時間や場を設定して自分の考えをもったり、表現したりするための学習活動を充実させる。
エ 小グループや一斉学習の中で、児童生徒の多様な見方、考え方を適切に引き出し、比較・検討する学習活動を通して課題の解決を図る。
オ 学習を振り返る時間を確保し、効果的なまとめの活動や練習活動を取り入れる。
(2) 個に応じた学習指導
児童生徒は、それぞれが個性豊かであり、比較的速く学習する子とじっくり学習する子など、学習速度や学習スタイルもまちまちである。
そこで、一人一人の学習状況を適切に把握し、コース別学習や課題別学習などの複線型の学習を展開したり、TTによる指導を工夫したりするなどして、個に応じた指導を充実させることが必要である。
四 道徳教育の充実
1 新しい学力観に立つ道徳教育
現在、学校教育においては、いじめ問題や人権問題の対応に向けて、生命尊重の教育など、児童生徒の心の教育の充実が強く望まれている。このような課題の解決に努める上で、新しい学力観に立つ道徳教育を一層充実させ、豊かな心を育むことは極めて重要となっている。
これからの道徳教育においては、児童生徒一人一人が、道徳的価値にかかわって人間としての在り方や生き方についての自分の考えをしっかりもち、自分のよさを生かして豊かな自己実現を図っていけるようにすることを目指している。そのために教師は、児童生徒がよさや可能性を生かして自己実現が図られるよう支援していく姿勢をもつことが必要である。
新しい学力観に立つ道徳教育を一層充実させていくためには、「児童生徒のよさを大切にした道徳教育の計画」「豊かな体験による指導」「内面に根ざした道徳性の育成」「環境による指導」などを大切にして推進していく必要がある。
(1) 児童・生徒のよさを大切にした道徳教育の計画
各校で作成される道徳教育諸計画は、学校教育全体で行う道徳教育や道徳の時間の指導の指針となるものである。全教員が参画して作成するとともに、各校の道徳的課題を十分に見据え、解決の方策を吟味したものでなければならない。
〈作成上の留意点〉
ア 児童・生徒や地域の実態については、それぞれのよさを十分に把握し、それらを伸ばしていく視点を盛り込むこと。
イ 長年にわたって培われた伝統や校風に着目し、学校の独自性を生かした道徳教育となるよう配慮すること
ウ 児童生徒同士や教師と児童生徒の豊かな人間関係を醸成して、常に相互に認め合い、そのよさを伸ばし合えるよう配慮すること。
エ いじめ問題への対応として、人