教育福島0209号(1998年(H10)02月)-006page
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提言
子供たちの伝統芸能をみつめて
お茶の水女子大学文教育学部助教授
本田郁子
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豊かな自然と共同体にはぐくまれ、長い歴史のなかで熟成されてきた伝統音楽や舞踊。日本をはじめとするアジアや東欧諸国に現在もいきづく、きらぼしのごとき伝統芸能に魅せられて、学生時代からその研究と実践に従事してきている。ここ数年、海外の芸能の日本への招聘や、東北地方の伝統芸能を全国や世界に向けて発信する事業にかかわりながら、子供たちによる気高く健やかな芸能の数々にふれる機会にめぐまれた。
世界有数の観光地のひとつであるインドネシア・バリ島。地上最後の楽園と称される、美しく豊かな自然、神々にささげられる絢爛たる祭りとそこから生まれた伝統文化で、多くの人々を魅了している。この島に、その代表例がある。
バリ島の伝統芸能としてもっとも人気の高い演目のひとつ、『レゴン・ラッサム』は、十歳前後の少女三人による宮廷舞踊である。青銅製の打楽器アンサンブル「ガムラン」の演奏にあわせておどる少女たちは、大人が脱帽するほどの高い技量と、一糸みだれぬコンビネーション、そして流れるように、優美に、しかも野性味あふれる独特な表現で、見る人を圧倒する。私たちがテレビなどで目にふれる子供の舞踊や芸能の多くは、内容や表現が稚拙・未熟なままみかけのかわいらしさだけで勝負するか、単純な大人のものまねや大人に媚びるような表現を全面におしだして勝負するか、表現の選択肢はそのどちらかしかないように思われる。しかし、精一杯おどるレゴン・ラッサムの少女たちは、未熟さや媚びのかけらをみじんもみせず、その姿はすがすがしく、神々しい。
こうした神がかりのような技の数々を披露する子供たち
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