教育年報1958年(S33)-071/83page

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§ 8 福島県立図書館

1.新しい図書館

 は し が き

 県立図書館の使命は,大きく分けると,2つにな

るのではないかと思われる。

 そのひとつは,現在ある市町村立図書館のための

みならず,将来設立される市町村立図書館のために

も,その設備において,その運営において,可能な

限り模範的な存在とならなければならない,という

ことである。すべて指導とは,世にいうところの口

頭禅ではないのであるから,市町村教委にたいして

指導的役割を果す県教委の使命にかんがみ,このこ

とは極めて自明である。

 もうひとつの使命は,市町村立図書館と違って,

一市一町一村の住民にのみ奉仕すれば足るというの

ではなくして,むしろ市町村立図書館の人々の協力

を頂戴しつつ,市町村の範囲を超えて全県民に奉仕

する体制をととのえていかなければならない,とい

うことである。

 幸いにして本年度は,新しい館舎の建築を見,や

や模範的な設備と運営の可能な状態に近づいた。こ

れからは従来のような「県立図書館はブック・ハウ

スであるかも知れないが,少くともライブラリーと

はいえない」といったような批判は当らなくなる。

まず,全館員が,第一の使命を自覚して,真剣に努

力している。第二の使命についても貸出文庫・自

動車文庫(あづま号)青少年巡回文庫等の従来の館

外奉仕活動にたいして,新たなる検討を加えるとと

もに,更に創意工夫を試みつつある。

 ただ,ここでお互に戒めあっておきたいことがひ

とつある。それは,活発な館外および館内の奉仕活

動が展開されればされるほど,それに比例して,そ

の背後に図書館資料を整備拡充していく「目にみえ

ない仕事」が重量を増してくるということであり,

このことはお互に胆に銘じておきたい。


図書館新築経過報告

 県立図書館建築工事につきまして今日までの経

過の概略をご報告申し上げます。

 旧県立図書館は,明治41年に県物産陳列館とし

て建築して以来,40有余年の歳月を経過し,その

腐朽はなはだしく,危険極まりない状態となりま

したので,昭和29年にいたり,改築の議が起り,

これが検討を開始するにいたりました。

 県におきましては,建築について万全を期すた

め,県立図書館改築協議会を設け,昭和29年8月

6日発足以来,数回にわたり協議をいたしました

結果,敷地は旧図書館跡とし,5階建1,465坪,

工費1億4千万円を,3カ年計画で,速急に改築

すべき旨の答申がありました。

 その後,図書館改築協議会を発展的に解消し,

新たに議会側から5名,学識経験者1名,県側4

名,福島市から2名,計12名の委員をあげて,県

立図書館建築委員会を設けたのであります。

 慎重慎議の結果

 (1)敷地は福島市松木町1番地とすること。

 (2)配置は公会堂に北側,図書館は南側とする

 こと

 (3)基本設計の構想については,建物の特殊性

 にかんがみて,専門家の意見を取入れて決定す

 ること

 (4)設計業者の選考は執行部一任とすること

 (5)地盤調査をすること

等の答申がありました。

 これらの答申を尊重して,今日まで事務を進め

てまいったのであります。

 なお,設計者の選定にあたっては,協議の結果,

県庁舎の競技設計に当選した山下寿郎設計事務所

を指定することが,最も適当であるとの結論に到

達したので,昭和31年12月,基本設計を同事務所

に委託いたしました。

 基本設計は昭和32年1月に完成いたしましたの

で,建築委員ならびに関係者の間において慎重に

検討を加え,これを基本といたしまして直ちに実

施設計の作成を委託いたしましたところ,3月に

その完成をみたのであります。

 その結果,建築坪数は805坪,工費は約6,300万

円(内2,000万は福島市の寄附)と相成りました

ので,昭和31年度から昭和33年度にいたる3カ年

度にいたる3カ年継続費の設定について,去る3

月(昭和32年)の県議会おいて承認を得たのであ

ります。

 ここにおいて福島市長との間に「県立図書館,

市立公会堂および公民館建設に関する協定書」を

締結いたしました。その内容は,

 (1)図書館建設敷地を無償で借りること

 (2)図書館建設敷地にある福島市所有の既建設

 物の移転補償をすること

 (3)県および市の工事は,昭和32年7月10日ま


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