教育年報1960年(S35)-129/135page
3館外奉仕
昭和35年度福島県立図書館館外奉仕活動の基本方針
県立図書館が,全県下を対象として実施している事業
は(1)自動車文庫による県内5コース別巡回。(2)16出張所
を通じての青少年巡回文庫の実施。(3)本館および6分館
の団体貸出文庫の三つである。
それらの事業のうち,自動車文庫は昭和29年に,青少
年巡回文庫は昭和30年に,それぞれ創設され,今日に及
んでいる。自動車文庫は,現在の駐車場が,町村合併前
に決められただけに,その後の町村合併の進展によって
村によっては一つのところもあり,三つのところもあり
はなはだしいのは駐車場から駐車場まで車で15分位とい
うところも幾つかあった。
利用者側からは「年2同位の巡回で一駐車場わずかに
40冊位の貸出では」という不満も出ており,「少くとも
隔月に1回,年6回位は巡回してほしい」という利用者
側の強い要望があった。
こういう不満や要望を充分反省しつつ,今日までの県
立図書館の奉仕活動をながめてみると,いちじるしく不
均衡であったことに気がつく。たとえば,安積郡の場合
をとりあげてみると,青少年巡回文庫,自動車文庫,そ
して郡山市に分館がある,といったように三つの奉仕活
動が折り重なって安積管内に奉仕している。だが,これ
を伊達郡についてみると青少年巡回文庫と貸出文庫の対
象にはなっているが,自動車文庫の対象になっていない。
こういう不均衡は他にもみられる。西白河郡もそうであ
る。こうした不均衡は是正しなければならない。
更に,従来のような「薄く広い」撒水車で全県下に水
をパラパラ撒いて来たような奉仕の仕方では,その効果
は余り期待できない。
そこで,本年度は,次のような方針で進むことにした
分館のある六つの出張所(北会津,南会津,安積,西白河,
相馬,石城)には青少年巡回文庫を中止し,16出張
所から10出張所に縮め,なおかつ自動車文庫でひんぱん
に巡回するにはもっとも不便なところ(両沼,東白川石川,
双葉)を選び,その地域には青少年巡回文庫を重点
的にまわすことにした。したがって,残りの6出張所
(信夫,伊達,安達,田村,岩瀬,耶麻)をもって自動
車文庫の主なる対象とした。
これまでの自動車文庫は,県内を5コースにわけ,70
カ所に駐車場を設置してあったが,それらのうち54駐車
場は当然中止しなければならなくなり,それらの駐車場
は,今後分館の貸出文庫か青少年巡回文庫のいずれかを
利用していただくことになる。しかし,中止する駐車場
に対しては,従来までの仕事をになっていただき,その
努力によってその地域にめばえた読書会に対して,読書
会活動に関する相談に応じたり,貸出文庫や青少年巡回
文庫の利用状況などをうかがわせていただくために,年
1回位は従来の駐車場を巡回する余地は残しておくこと
にした。
A 貸出文庫
この貸出文庫は,登録を受けた読書グループ並びに館
長または分館長が適当であると認めた機関,および団体
に対して貸出すもので,本館と6分館(郡山,会津若松
平,白河,相馬,田島)でそれぞれ業務を取扱い,申請
に応じて1回30冊を限度に1ヵ月から2ヵ月の期間,貸
出を行っているものである。
なお業務取扱区域を一部変更し,従来白河分館の業務
取扱区域にあった石川郡を本年度から郡山分館の業務取
扱区域に編入した。
本年度は,各分館に対し,図書300冊ずつ,計1,800
冊を配置した。
A表についてみると,昭和35年1月から12月までの1
カ年の利用状況は貸付件数607件,利用人員12,991人,
利用冊数23,007冊で前年に比較し若千の増を示している
B表については,前年同様,読書会の利用が最も多く
次ぎが青年会,官庁会社,婦人会,公民館の順となって
いる。
C表についてみると,本館を除いて各分館とも分館所
在地の利用が多く,分館所在の地域外,つまり担当地区
内の町村の利用が少ないことは遺憾である。これは改め
ていきたい。
D表の男女別の別用状況については,前年度までは男
の利用が若干多かったが,本年は男45.5%,女54.5%と
逆に女の利用が多く,婦人層の読書に対する関心が高ま
ってきていることがうかがわれる。
E表の読書傾向をみると,利用団体の大部分が自由選
択の方法によるもので,最も多く読まれたのは文学関係
次ぎが社会科学関係,歴史,芸術,哲学,産業その他の
順となっている。
(A) 貸出文庫
利用状況 昭和35年1月〜12月
区分\館別 本館 郡山分館 会津若松分館 平分館 白河分館 相馬分館 田島分館 計 貸付件数 227 127 29 63 53 70 38 607 貸付冊数 6,170 2,617 493 1,332 1,445 1,928 483 14,468 利用人員 3,587 4,898 576 889 1,627 792 622 12,991 利用延冊数 9,186 4,899 1,100 2,681 2,988 1,609 544 23,007