福島県の中学校の学習に対する意識と行動-114/115page

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〈まとめ〉

 本調査結果の分析・考察に基づき,本県における中学生の学習に対する意識と行動について,今後の学習指導の工夫・改善の方向を示唆すると思われる次の3点について若干の説明を加えて,本調査のまとめとしたい。

 1)本県中学生の学習における自主性・主体性の育成については,開発の余地が十二分にあること

 2)学習についての意識や行動の向上・充実のためには,中学1年次の学習の重要性を再認識する必要があること

 3)今後の学習指導においては,魅力的で「分かりやすい」授業の工夫が一層求められていること

 本調査結果に示された「生徒像」における最も注目すべき特徴は,潜在的な学習意欲と実際の学習行動とのアンバランスであり,そこに見られる学習活動における自主性・主体性の乏しさである。多くの生徒が,進路目標を持って家庭学習などを充実させたいと考えながらも予習・復習はあまりしないなど,実際にはそれを行動化できないでいる。また,各教科の具体的な学習場面についての回答からは,自分の学習課題を見いだせずに受動的な活動に終始してしまったり,学習課題を知りそれを解決しようとする意欲を持ちながらも,どうしてよいか分からずに,結果的に答えだけを求めるような依存的な生徒の姿が浮かび上がってくる。これらのことは,本県中学生の学習における自主性・主体性の育成に関して,その意識・態度および具体的な学習技能の両面において,開発の余地が十二分にあることを示している。

 一方,意識や行動の変化についてみると,中学校時代の意識や行動が,小学校時代からの関心・意欲や学習課題の達成度に負うところが少なくないとともに,中学校1年時を分節点として,その後両極化が進むことが分かる。これらのことは,生徒たちの学習についての意識や行動の向上・充実にとっての,中学1年時の学習の重要性を示している。すなわち,中学1年時の学習指導を,小学校と中学校の学習活動上の結節点として位置付けるだけでなく,中学・高校を通じた自主的・主体的な学習力の基礎づくりの時期との認識を明確にするとともに,そのような認識に基づいた具体的な取り組みを一層重視していく必要があると言える。

 生徒たちが「楽しい授業」や「おもしろい授業」を強く望んでいるという調査結果は,そのような具体的な取り組みとしての日々の「授業」の重要性を改めて示しているものである。生徒の潜在的な学習意欲の高さを考えるとき,生徒が求めている授業とは,生徒一人一人にとって,教師から「教えられる」だけでなく自分なりの取り組みの中で「分かる」ことを実感できるという意味で,「魅力的で分かりやすい授業」であると考えるべきであろう。自主的・主体的な学習に不可欠な意欲・態度や学習技能を育成するためにも,生徒一人一人が「自らの学びを実感できる」ような授業を目指して,指導に一層の工夫'改善が求められていると言える。



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