紀要第21号〜23号 研究紀要 - 000_02/102page

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ま   え   が   き

 子どもが,生まれながらにそなえている天分を,教育において素直に伸すことができたら,それはすばらしい事と思う。福島県教育センターでは,児童・生徒の学力の向上を含めて,学校経営,学習能力に関する研究を推進し,さらに,豊かな人間性を目ざして幼児の性格形成に関する研究を行い,これらの紀要をここにまとめた次第である。

 学校経営は,申すまでもなく教育課程や教育計画に従って,教育組織,校務組織,学校運営組織を基盤にした実践活動ということができる。今回は,主として教育組織である学級担任制,教科担任制と教授活動を中心にして,本県における教授組織の実態を明らかにした。教授組織の改善については,各学校においてさまざまな試みがなされているようであり,教授組織の形態も,各学校の諸条件をふまえて実践されており,それぞれのタイプが認められたが,今後の課題もまた多いようである。学校においては,その形式方法にだけこだわることなく,教授組織の本来の目的達成のために教師の優れた着想と健全な意識を望むものである。

 児童・生徒の学習能力の研究については,教育活動が教えることが主活動であった従来の方法より,むしろ子どもサイドに立った学習にスポットをあてて,授業過程における学習能力の形成をねらったものである。学習目標は,学習者である子どもによって達成されなければならないものであり,それらをリードするのは教師の本来の責任でもある。したがって,潜在する子どもの能力に視点をあて,これを開発しようとするねらいは,学習指導の前進のために意義あるものと考える。この研究の内容は,本年は,社会科,音楽科,家庭科とし,実際に授業を担当している学校現場教師の授業面の協力,諸調査面の協力を得ることができた。

 教育相談面では,教育活動や児童・生徒の健全育成面において,より円滑化をはかるべく幅広い研究・調査を従来から行ってきたが,今回は,幼稚園児および小学校低学年を中心とした心身障害児の実態調査と人物画テストによる性格診断の考察を行なった。すなわち,幼児ならびに小学校低学年では,知能検査の実施が極めて少なかったし,性格テストを実施しているところは,皆無に近かったようである。これらの調査や研究によって,幼い子どもの知能的欠陥や,機能障害をより確実により早く発見することができるとすれば,今後いっそうの開発が期待されよう。

 これらの研究は,単年度ごとにまとめているが,ほぼ3ヵ年の研究サイクルで取り組んでいる。
これまでに,調査活動をはじめ資料収集に協力くださった学校,また授業を提供された協力員の方々に心から感謝する次第である。

 研究内容は,まだその過程にあり,方法や内容にも多くの問題を残しているようである。しかしながら,より多くの方々に活用していただくと共に,ご指導とご鞭撻を切にお願いする次第である。

 昭和51年3月

福島県教育センター所長

 高 橋 幸 一


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