研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 001/118page
ま え が き
学校の教育活動において,学習指導の占める比重は極めて大であり,かつ広く関心を集めているが,この言葉が始めて使われたのは,昭和22年である。当時の学習指導要領には,これまで教授とか授業とか言って来たのと同じ意味であると述べている。そのころ漸く従来の教師中心の教えこみに対する反省的な考えが芽生え,学習指導は,子どもの将来のためになるように教材を準備して指導することが大切だと考えられた。その後も学習指導についての研究が重ねられて今日に及んでいるが,当時の状勢下にあって指導者が思いをめぐらした考えは,今も私どもの脳裏に刻みこまれている。
私どもが,県内の各学校における学習指導の参考として,本年度は5つの主題をのせることにした。第1は,単語の意味を広げさせる指導に関する一考察である。これは,国語の小学校教材として,子どもに基本語いが豊かに身につくことを願い,その指導体系と基本動詞の系列を調べたものであるが,指導の一般化をはかる前段階の手がかりとしてのせたものである。
第2は,文学的文章の読みとりに関するもので,童話や民話を経験する機会の多い小学校低学年の子どもに,文章に興味をもち想像力をもって正しく読みとることをねらった。
第3は,実験教材としてのヒヨコの活用である。これは,高校教材であり,指導資料として身近かなものを実験教材として活用しその目的を果たしうることを合わせ示したものである。
第4は,食品の調理性に関する指導資料で中学校教材である。食品は,それのもつ性質を理解することが大切であり,その作り方は常に科学的な裏づけ,すなわちその調理性を理解することの必要さを述べた。最後に,情報化社会と情報処理教育については,情報処理教育が今や一般化し国民的教養の一部とまで言われている状況下において,もう一度その原点に立ちかえり,その認識を深めることをねらった。
以上は,全般的なプロフィールであるが,当教育センターの諸事業の中から研究の一端を述べたものである。これらの研究に当たっては,調査活動に多大の協力をくださった学校もあり,また助言いただいた関係機関の方々にも深く謝意を表する次第である。
なお,研究は,それぞれのテーマに基づいて進めてきたとは言え,なお,多くの間題をかかえているようであるが,皆さまのご指導とご批判を賜わることができればまことに幸いである。
昭和52年3月
福島県教育センター所長
山 内 正 彌