研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -048/090page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

食卓に出す直前にソースとあえるが,これは,野菜からの放水を少なくし,パリッとした新鮮な歯ざわりを失わないようにするためである。
反対に漬物など味を浸透させたいもの,しんなりとやわらかくしたい場合は,早く食塩をふるようにする。
目的に応じて,食塩をふる時期やソースとあえる時期を考えさせるようにする。

野菜の中のビタミンCの存在を上記の実験後に見せるのもよいと思う。
上記の実験で流出してきた液を白い皿に2cc入れ,今一つの皿には同量の水を入れる。各々の皿に2・6ジクロールフェノールインドフェノールの1万倍液を2cc駒込ピペットで一滴ずつ落してみて色の変化を見させる。

きゅうりの流出液の方は,ビタミンCによって試薬が還元されて無色になり,ビタミンCの存在がわかる。
水の方は試薬の青色が消えない。

以上野菜サラダを指導する際の行動目標の分析に基づいて,児童の理解を助けるための食品の調理上の性質に関する実験や指導資料作成の例をあげたが,児童の実態に応じて適切にとり入れて行動目標達成に役立ててほしい。

(3) 行動目標と形成的評価

10頁の(1)において,生野菜の調理学習の行動目標の分析を行った。
授業展開に当たっては,


[1] 下位行動目標群を段階化して学習の順序に配列する。(学習指導案の中に下位行動目標が位置づけられているか確認する)

[2] 下位行動目標群に対して,形成的評価を位置づけ,目標が形成されているかどうかチェックする。その際,児童の理解の程度に応じてフィードバックできるよう適切な資料を準備しておく。

下位行動目標に対応して形成的評価を行う場面を位置づけておくのは,指導のプロセスでねらった指導がうまくいっているかどうか,何を指導し,どのように手をうたなければならないのかの手がかりを得て,児童一人一人の理解の程度に応じて適切な指導ができるようにするためである。

[3] 指導法改善のために,授業の記録を大切にしていきたい。

以上のようにして,生野菜の調理学習においておさえたい基礎的知識・技能が児童一人一人に身につくようにさせたい。

また,児童が日常なにげなく食べていた野菜や果物と自分の健康とのかかわりあいに気づかせたい。色彩豊かで,味の組み合わせなどを工夫した美しい野菜サラダをつくることができたという喜びを味あわせ,家族にも作ってやろうという気持ちを育てたい。

食事づくりに関心と意欲をもち積極的に手を下していく実践力をもつ児童像をめざして,内容の精選や指導法の工夫に努めたい。

5.おわりに

児童の家庭生活認識の内容について,発達段階,性別などから考察を行ったが,小学校の家庭科において,児童の家庭生活認識活動を正しく進め,高めるよう援助していくことが大切である。

家庭生活を営むための衣食住,家族関係や家庭経営などに関する知識・態度・技能を系統的・計画的に児童に教え,体得させて,家庭生活をよりよくする能力の養成をめざすようにしたい。

それには,家庭生活の諸分野に対する児童の認識活動を基準にして,それに教育的配慮を加えて指導計画を立てることが望ましいと思う。

指導に当たっては,食物領域で一例を示したが,部分と全体との有機的関連をとおして,全体として家庭生活の充実発展をめざすとともに,その過程では,絶えず指導の中心が家族の幸福,人間形成にあることを念頭におくようにしたい。

参考文献
・家庭科教育の研究 岡村喜美ほか 学芸図書
・家庭科教育共同研究推進委員会報告書
                日本家庭科教育学会


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。