研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -061/090page
8.NCテープの作成
当センターには,数値制御用工作機械(NC)実習用として,日立精機製立フライス工作機械,MD−II型,FANUC製220A型制御装置が設置されている。
従来のNC実習は,紙テープせん孔機でNCテープの作成から始め,プロセスシート上でエラーチェック,修正の後に切削を行っていた。
特に生徒を対象とした実習は,切削加工が容易でなく,指導者は細心の注意と緊張を要するところである。送り速度,Z軸の値,スピンドルの回転,符号の誤りなどの論理エラーを十分にチェックしても更に,シングルブロックやZ軸に余裕をもたせた試運転を行ってから切削に入っていた。
これらの方法では,1学級毎に実習に来所されても,時間的に余裕がなく,全員が切削を行うまでには至らず多くの問題点を含んでいた。
当センターでは,FORTRAN言語でNCテープチェックプログラムとコマンドプロシジャーを開発して,新システムのTSS端末と自動製図機を組合せて,NC実習を行うことにより,これらの問題点を解決した。
NCテープの作成は,マニュアルプログラムに従ってTSS端末から入力し,NCテープチェックライブラリーにより,文法チェックとエラーの修正を行った後に,エラーの無い場合にのみ,NC紙テープが出力される。
次に,このNCテープを自動製図機で描画して論理的なエラーをチェックしている。
これらを繰返し行うことによって,目的とするNCテープが完成し,切削を行っている。これらの方法により,安全性の確保,実習時間の有効な利用,指導者の精神的な負担の軽減をはかることができた。
TSS端末から一クラス40数名の生徒実習が,同時展開も可能であり,なおかつ,電子計算機に直接触れたNC実習ということで,機械系の生徒には,コンピュータ学習の一部となり,他の言語を使用した情報処理教育にも成果をあげている。
(1) 数値制御工作機械システムの構成
入力されたNCデータは,ホストコンピュータにより,当センターで開発したNCデータチェックライブラリーによって文法エラーチェックをし,エラーのある場合には修正を行う。
紙テープに出力されたNCデータは,自動製図機で描画して論理エラーをチェックするか,直接切削加工を行う。
(2) NCテープチェックライブラリー
NCテープチェックライブラリーは,FORTRAN言語で作成されたプログラム群である。
このライブラリーは,NCマニュアルプログラムで作られたNCプログラムをTSS端末から入力し,処理の中では単なるデータとして取り扱い,NC工作機械の仕様(文法)に合致しているかどうかをチェックしている。
合否は,ディスプレイ上に表示され,修正もTSS端末で行う。
文法的に正しいNCデータのみ紙テープに出力されると同時に,Z軸の値,送り速度,スピンドルの動きを記入したプロセスシートがプリンターより出力される。