研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -025/071page

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6. 石灰石と塩酸の反応の実験と考察

(1) 三角フラスコ (300ml) の容器を使用

1.教科書では,ポリエチレンの袋やポリエチレン製の広口びんを使用している。
 ポリエチレン製広口びんの場合,内ぶたにゴムパッキンなどを施さないと二酸化炭素がもれたり,容器が不透明なため気体発生のようすが観察できない欠点がある。利点としては,内圧が3気圧くらいになっても十分耐えられる。

2.三角フラスコの場合,ガラス容器のため破裂する危険性はあるが,塩酸に反応させる石灰石の量を1g以下にして行えば安全であり,反応のようすを観察させながら,「観察できる能力や問題が発見できる能力」を高めることが可能となる。

3.ゴムせんのさしこみが不十分だと,気体発生に内部圧力増のため,ゴムせんがとぶおそれがあるので口をぬらさないように,ロートを使用して塩酸を入れる。



(2) 石灰石を約1g以下にする理由

1.密せんした300ml用三角フラスコの中で,約1gの石灰石を反応させると,内部圧力は約 1.6 〜 1.8 気圧になるので,使用する石灰石は1g以下を限度とする。

2.下記の資料のように,容器の内部圧力が大きくなるので1g以下で実験を行う。

      容器の大きさ

石灰石

200ml 300ml 500ml
1.0g 2.2気圧 1.8気圧 1.5気圧
2.0g 3.4 〃 2.7 〃 2.0 〃
3.0g 4.6 〃 3.4 〃 2.5 〃

<資料>三角フラスコの大きさとCO 2 発生時の容器の内部圧力との関係
   (ただし,1気圧室温 20°C の場合)



(3) 反応物質の質量と生成物質の質量について

2HC1 + CaCO 3 → CaCl 2  + H 2 O +CO 2
2 × 36.5g 100g     111g   18g   44g


1.石灰石1gに反応する塩酸の量は,上の反応式から計算によって求められる。
 石灰石と塩化水素の質量比は 100:73 だから, ( 100:73 = 1:X ) より塩化水素は O.73g となる。
 4N (約15%) の塩酸1cm 3 は,その中に塩化水素を O.15g 溶かしているから, O.73g ならば, O.73 ÷ 0.15 = 4.9cm 3 となる。
 したがって, 20cm 3 ならば十分な量といえる。

2.二酸化炭素の発生量は,上記の式から,石灰石と二酸化炭素の質量比は 1OO:44 だから, ( 100:44 = 1:X )より二酸化炭素の発生量は O.44gとなる。

3.三角フラスコ内で反応がはじまり, O.24リットル ( 240cm 3 )が気体となる。
 すなわち,二酸化炭素の発生量は O.44gである。1気圧 20°C(常温)で気体の体積は1モルあたり 24リットル だから,( 44:24 = 0,44 :X )よりO.24リットル ( 240cm 3 )のとなる。したがって, 300ml の三角フラスコでよい。

<石灰石と塩酸の反応に関する実験データ>
       発生量

石灰石の質量

CO 2 の発生量 (g) CO 2 の発生量 (リットル)
理論値 実験値 誤差 理論値 実験値 誤差
0.5g 0.22 g 0.20 g 0.02 0.12 l 0.11 l 0.01
0.6g 0.26 0.24 0.02 0.14 0.13 0.01
0.7g 0.31 0.29 0.02 0.17 0.16 0.01
0.8g 0.35 0.32 0.03 0.19 0.17 0.02
0.9g 0.40 0.39 0.01 0.22 0.21 0.01
1.0g 0.44 0.41 0.03 0.24 0.22 0.02

※電子てんびん使用 実験時の室温21度


(4) 反応時間を10分程度にするため,約15%の塩酸を使用する。高濃度のため,取扱いには注意を要する。

(5) 約 O.5g の石灰石を約10%の塩酸20ml 中で反応させると,反応所要時間は約15分である。


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