研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -055/071page

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6. おわりに

 教育という仕事は,生徒と教師があれば成立するという単純なものではない。生徒の学習意欲,学習教材・学習指導法どれをとっても生きものである。人間を扱うからである。物質が原子または分子からでき,更に原子と原子核からなり,核も多くの粒子からなる。かりにこれら粒子の性質がわかったとしても,それらでできている物質の性質もわかることにはならない。実に複雑多彩である。あたかも一人一人の生徒を観察して,よく知っているつもりでも,集団になると容易に想像できない行動をすることがあり,よく似ていると思う。しかし,そのような複雑なものでも「振る舞い」を説明したり予測したりできる教師がいる。これがベテランといわれる教師である。
 筆者は自然科学の少数の原理からできるだけ多くの事実を説明しようと試みている。人間界の複雑な現象を少数の原理,法則によって垂直的に分析することは極めて危険なことであり自戒していることでもある。しかし,これをあえて行ったのは,いわゆる「カン」や「名人芸」といったものではなく,はっきりとしたアングルでの実践を行いたかったからである。一時「発想法」とか「水平思考」などが言われたが,要するに筆者のような垂直思考でなく,型にはまった考え方から抜け出し,アングルを変えて柔軟に思考することを奨めたものである。筆者の考え方は,物理現象と教育を,単なるアナロジーではなく,因果的に結びつけようとした試みでもあった。
 ねらいを達成させるための教材教具の開発は,時代の移り変りとともに常に新しく,また,原理的にしっかりしたものは長く生き続ける。筆者はこれを絶えず念頭におき,原理的にしっかりしたものを追求して行きたいと思っている。いくら時代が変ろうとも教材・教具の開発には終りはないからである。



脚 註  (主に筆者の著作によるもの)

註1: 昭和44年度高等学校教育課程都道府県集会
    研究成果要旨 
    (県代表者会議で筆者作成のものを県案として採択提出,文部省)
    全国集会筆者発表

註2: 到達度の差に応じた分岐型指導形態の開発と実践
    理科の教育 VOL27 東洋館出版
    昭和53年10月号 P60〜
    同上発表昭和52年度文部省教育課程講習会
    (国立教育会館,県代表として筆者)

註3: 文部省教育課程講習会(北海道・東北・関東地区)
    発表県指定 筆者案発表 昭和55年7月

註4: 中等教育資料 No.418 昭和55年11月号 P34〜
    文部省視学官・調査官

註5: 学校の実態に即した学習指導と実践
    高校教育学事出版 昭和55年12月号 P75〜

註6: 昭和56年度読売教育賞 「理科教育部門」
    優秀賞入賞論文・・・筆者・・・読売新聞社

註7: 高校教育展望 小学館 昭和56年6月号 P160〜

註8: 高校教育展望 小学館 昭和56年7月号 P158〜

註9: 「習熟度に応じた学習指導の実践と評価」報告書
    昭和54年度文部省グループ研究費による研究
    県立保原高等学校代表・・・筆者

註10: 教育課程の改訂と新科目の学習指導についての研究
    県教育委員会指定研究 県立保原高等学校

註11: 昭和57年度 全理セ物理部会研究発表集録
    わかる授業の教材展開と評価

註12: 昭和58年度 全理セ物理部会研究発表集録
    測定装置とその実験モジュールの開発

文 献
  TTLIC 規格表    CQ 出版
  メモリ IC 規格表  CQ 出版


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