研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -030/076page
(3)熱勘定
以上の結果をもとに,中学校における熱機関教育の立場から,つぎの 1)〜 2)についてまとめる。
1)特性曲線から
ア.抽出力は回転速度の増加に比例して増加し,ある回転速度で最大値を示す。これが最大軸出力である。
また,抽出カは絞り弁開度量に比例して増加する。イ.軸トルクは最大軸出力における回転速度より低い点で最大値を示す。
燃料消費率は軸トルクの最大値近辺で最少値を示す。ウ.1),イから,経済的に機関を運転する観点をおさえることができる。
2)熱勘定図から
燃料の発熱量が機関でどのように配分されるかを熱勘定という。これは機関の種類によ り,運転条件によって変化する。
正味熱効率以外は熱損失であるが,この損失はサイクル論的に必要な低熱源への放出である。排気損失と,構造材料の保護のための冷却損失に大別されている。排気損失は膨張比,燃焼速度などに影響されるといわれている。冷却損失は強度や耐久上重要であるが,吸入効率や燃焼などに対する影習が大きく,単なる構造材料の保護以上の意味をもっている。
正味熱効率の大きい機関は効率のよい機関といえる。機関の改良などの方向性を示す観点となる。
3)直接計測値から
試験運転時における各部の温度や作動流体の温度並びに圧力等は熱機関を総合的にとらえるための重要な事項である。
この試験における冷却装置は汎用機関とは異なるが,じゅうぶん参考となる計測値である。
(4) 機械効率
この性能試験ではふれなかったが,インジケータ線図は,燃焼の解析や摩擦平均有効圧力並びに機械効率の算出に有効な資料となる。
ここでは,インジケータ線図採取方法の概要と,インジケータ線図の実例から,シリンダ内の圧力を求める方法についてまとめる。
つぎに,P-V線図並びに,P-θ線図の実例を示す。
第7図 P−V線図採取系統図