研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -000-01/106page
ま え が き
教育活動を進めるさい,教師はまず,いかなる児童生徒にも「育つ力」,「学ぶ意欲」が内在しているということをふまえて計画や実掛こ取り組むことが大切である。
学力の向上は,生徒が基本的に備えている資質に加え,学力向上へ向けての内的エネルギー(学習意欲)の高まりと,教師の指導力の総和によって成立するといわれている。そのため,教師には,一人一人の生徒の資質を見い出し,学習意欲を誘発し,発展させることへの努力が要求され,加えて授業内容,方法の最適化を図るための情熱を備えていることも期待されている。
我々教師は,日々の授業への具現化にあたって,これらを踏まえ,適切な教材内容の構成や,指導方法に改善を加え,常に自己評価を行い,より確かな授業づくりに努めなければならない。教育センターでは,前述の趣旨に基づき,「学習指導改善に関する研究」と越し研究を行ってきたところであるが,その中で特に,59,60年度は,1学習指導と評価の中で「関心・態度の評価」についての実証的研究を行うことと,4理科における「身近な素材の活用と指導法」についての,素材の開発と学習指導法の改善に視点をおき,実践的開発を行ってきた。
本冊子は,前述のうち2の「身近な素材を活用した理科指導に関する研究内容」について集約したものである。
本来,理科指導のねらいは,「自然の事物・現象についての直接経験を重視し,自然環境についての基本的理解を得させ,最終的には,総合的な自然観の育成」にあることから,子どもたちには,当然のことながら,具体的な身のまわりの事物に直接触れさせることが必要であり,また事物をみる目を養うことや,ありふれた気づかない事象・事物にも目を向けさせることもたいせつな指導の視点である。
この研究は,「身近な素材」を単に身近な自然として位置づけるにとどまらず,広く子どもたちが経験する家庭内における電気に関する事象や,テレビ,パソコンなどの情報としての事象をも含めて定義しているところに特徴があると言える。また,指導者側からも,身近にある指導に役立つ素材,手軽に得られる素材の利用による指導も研究の視点として位置づけ,そのことが実験・観察の器材を多量に準備でき,指導の個別化を図ることへの配慮にも結びつくようにと,意図したつもりである。
各学校においては,この研究の趣旨,及び研究内容を読みとっていただき,各先生方の学習指導の一つの視点となれば幸いである。
なお,本研究を進めるにあたり,研究開発及び授業実践にご協力いただいた研究協力委員の先生に改めて感謝の意を表する次第である。
昭和61年3月
福島県教育センター所長 折 笠 常 弘