福島県教育センター所報ふくしま No.22(S50/1975.8) -025/026page
クエスチョソ・アンド・アンサー(教育用語解説)
<質問> 本時の「目標行動のみでなく,それを具体化した下位目標行動の設定がなけれぱ,学習の効果はあがらないといいますが,それはなぜですか。また,一単位時間の下位目標行動はいくつ位設定すればよいですか。
<答> 本時の目標行動は,何をどこまで教えればや学習者がどのような状態になるかを,具体的に表現したものですが,これだけでは一時間の授業の展開過程に即した目やすと学習効果の確認が得られません。それで本時の目標行動を,本時の授業展開過程に即して分析し,本時の目標行動の目標値に到達するための基礎となる行動や学習要素を明確におさえる必要があるのです(これが下位目標行動です)。そうすれば,展開過程に即して具体的に目標行動がおさえられていますので学習効果の確認がその都度得られ,適切な指導ができ,効果をあげることができるのです。
下位目標行動をいくつ位設定すればよいかは,数を多くすれば指導の焦点がはっきりするのですが,普通は,本時の目標の重みと学習者の実態を考慮して,3〜4個程度のようです。
とにかく,下位目標行動は,学習効果の確認ができるまで具体化することが必要です。
<質問> いまの子どもは「学力」がない,と言い,学習能力をつけなければならないと言います。一体,学力といわれるものと学習能力といわれるものは,全くちがう概念なのか,また,これらの関連はどうなのか教えてほしいのですが……。
<答> 学力は,学習することによって獲得した力(または能力)であり,学習能力は,学習するための能力であるといいきってしまえば,明解のようですが,学力そのものについて,広義,狭義に考える人があり,教育学的立場,社会学的立場,心理学的立場から説明する学者があって,学習能力の定説化までにはいたっていないというのが現状ではないでしようか。
学習能力は,情報化社会における能力の重視から学習すべき能力であるとしたり,児童生徒の主体的な学習活動を促進させる学習方法訓練を通して獲得させる能力であるとするなどまちまちに使用されています。また,学力についても,理解・態度・能力等の観点から評定される学習の結果,身についた力をさしたり,学習能力と同義語,またはそれを内包する語として使用される等混乱が見られます。
したがって,この用語の使用にあたっては,用語の概念規定をする必要があります。
<質問> このごろシステム化ということを言いますが,System は日本語で組織と訳されるのに,どうして従来言われてきた組織化ではいけないのですか。
<答> システム (system) は,質問者のいうように「組織」とか「体糸」「しくみ」などと,訳されますから,「システム化」と「組織化」は,ことばとしては同じです。
しかし,「システム化」として用いている場合は,「組織する」という一般的な用い方ではなく,厳密に規定して用いています。たとえば,「教育のシステム化」は,「教育目標をもっとも効果的に達成するために,教育に関係するいろいろな要因を,側面(人,ものなど) 領域 (目標,内容など) 水準 (社会全体で,学校で,授業でなど) などの視点から,最適に組み合わせること」(板元昂「教育工学の原理と方法」)と定義されています。また,システム化の手だても,科学的な方法を十分にとり入れながら,「目標やシステム内容の分析,諸要素の相互関係の吟味と組み立て,システム自身の再評価とつねによりよいシステムへの改善」がとくに厳しく要求されます。
従来の「組織化」ということばを用いた実践にはシステム化で意図していることと「同じようなとらえ方をした例もありますが,一般には必ずしも十分ではなかったようです。
<質問> 情報処理教育ということばが使われはじめてから大部たちますが,情報処理とは,簡単にいってどのようなことですか。
<答> 情報処理 (Information Processing) は,ある問題の解決,またはある目的達成に必要な情報(一次情報)を収集し,必要に応じ,それらの情報を使って計算,比較判断,結合等の加工を行ない,必要とされた結果 (二次情報) をある目的に使用できる形に編集するという一連の活動を指します。
私達のまわりは,大量でかつ多種多様な情報が渦巻いており,これらの情報に対し,特別な関心 (「問題の解決,目的の達成) をもつことにより,日常生活や職場においても,いわゆる情報処理を行なっているのです。
あ と が き所報第22号ができましたのでお届けします。
ミスのない編集をと心がけ努力していますが,前第21号にミスがありました。
クイスチョン………は,クエスチョン………でしたのでお詫ぴいたし,訂正させていただきます。