つきだて−社会科しりょう−-065/067page

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 三淀ケ入(みよどがいり)の清流・布川にある大岩(おおいわ)に、半肉彫(はんにくぼり)、34体の観音像(かんのんぞう)があります。これは、約260年前に彫(ほ)られたもので、下神山磨崖仏(しもがみやままがいぶつ)と呼ばれています。誰(だれ)が、何を願って彫ったのかわからないのですが、村石(むらいし)地区にはこんな話が伝わっています。

おもんさま
 ずーっとむかし、村石部落に、おもんさまという婆様(ばあさま)が住んでおりました。このおもんさま、村石に嫁(よめ)入りしてから、「子が欲(ほ)しい」と願い続けていましたが子宝(こだから)に恵(めぐ)まれません。
 ある晩のこと、おもんさまは何やらあんまりまぶしくて目をさましました。よくよく目をこらして見ると、金色(こんじき)のけさ衣(ごろも)を着たお坊様(ぼうさま)が立っていらして、「おもんさまよ、子のないことをうらむでないぞ。これからは仏(はとけ)につかえる身となって、天命(てんめい)をまっとうせよ」とおっしゃったのです。
 夢(ゆめ)か幻(まぼろし)か、ふと気がつくともう夜が明けていてお坊様の姿はどこにもありません。おもんさまは、仏様のありがたいお告(つ)げだと考え、さっそく石屋を呼(よ)んで、布川の大岩(おおいわ)に西国三十三観音(かんのん)の像(ぞう)を彫(ほ)ってもらい、毎日一生懸命(いっしょうけんめい)拝んだのです。
 その後、おもんさまは大往生(だいおうじょう)をとげました。村石の人たちは、三十三観音の隣(となり)に一体の供養像(くようぞう)を彫(ほ)り、おもんさまの冥福(めいふく)を祈ったということです。

おもんさま


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