月舘町伝承民話集 -016/200page

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勘四郎地蔵の話

 今から二百年程前の話である。糠田の坂下に丑松という若者がおった。酒は飲むし乱暴者で、近所の人たち誰もが恐れおのヽいていた。

 その近くに勘四郎というとてもまじめな若者がいた。近所の人たちにも良い若者だと評判がよかった。その丑松と勘四郎が近所に住む娘のことで仲が悪かった。
娘は村一番きれいなそして利口な娘だった。丑松と勘四郎のどちらにも返事をしないが、心の中では評判のよい勘四郎が好きだった。しかし丑松は腕づくでもその娘を自分の妻にしようとして勘四郎の悪口をいい、事ある度におどかしていた。
ある寒い冬の日だった、村はずれで丑松と勘四郎がばったり出会ったからたまらない。日ごろの恨みをはらそうとついに決闘になった。その日も丑松は酒をのんでいた。呑んでいたというより、あびていたというぐらい酔いどれていた。丑松は、足もからだも酒のためにくたくたになっていた。そして、勘四郎に組み敷かれてついに殺されてしまった。
村の人たちはあばれ者の丑松が、勘四郎におどりかかってついにまけて殺されたという話をきいて、胸をなでおろす人が多かった。
丑松の弟に正松という若者がいた。正松は丑松ほどあばれ者でなかった。しかし兄が殺された時はまだ13オのこどもだった。兄が勘四郎に殺されたことを聞いて必ず、そのかたきを討とうと決心していた。
大きくなるにつれ、正松も力持ちの青年になった。勘四郎はそのころ結婚してはいなかった。あの娘もまだ嫁にはなっていなかった。 正松は丑松のかたきをとりたいと朝晩そればかり考えていた。 勘四郎に結婚の話も出て近く祝言が行われるようなうわさが村中に伝わった。正松はだんだん兄のか


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