月舘町伝承民話集 -015/200page
は死んであの世で再起をはかり、亡き夫や子どもと手をとり合って、天朝様のために尽しましょう」と相談を持ちかけた。誰も反対する人はなかった。いつまでもいつまでもすすり泣く九人の涙声と夫や子を呼ぶせつないさけび声が、雨の夕暮れの中にきこえていた。
そしていたましくも折重って自害し果てたのであった。そこは三拍子の東にある行屋入の丘の上だった。村の人たちはこのことをきいて、欺き悲しんで九人の霊を祀って椿の木を一本植えたのだった。毎年春になると、九人の霊が喜んでいるかの様に、まっ赤な椿の花が咲くのだった。
その後、村人たちはこの椿の下に九人の霊を弔うために小さな石碑をたてた。しかし明治の初めころ、その石碑も誰かの手によって別の場所に移され、今はそこには何もなくなった。ただ椚塚という地名だけが残っていて、昔の物語りを今に伝えている。