月舘町伝承民話集 -018/200page
たき討ちについてあせり出していた。そして正松は勘四郎の様子をうかがって、かたき討ちの機会をねらっていた。
たまたま勘四郎は川俣に絹売りに行くことを正松は誰かに教えられた。そこで、正松は勘四郎の帰りを岩巡で待っていた。日はとっぶりと暮れて、秋の夜風が小手川の方から冷たく吹き寄せていた。勘四郎は絹を売った代金をふところに入れて、吾が家へ足早に急いでいた。突然、下手渡の岩巡を過ぎると、正松に、呼止められた。「勘四郎!!兄のかたきだ!!覚悟しろ!!」正松はキリッとした身仕度をととのえて、勘四郎にとびついて来た。不意をつかれて勘四郎はあわてた。 そして正松の大力に圧倒されて、ついに彼のため命を奪われてしまった。
勘四郎は、常に家族に言っていた。俺はいつ死ぬかも知れないが、俺の死体の百間以内の所に、財布を投げておくから必ずさがしてくれと、口ぐせのようにいっていた。勘四郎が正松に殺された一里塚には、絹を売った代金が財布に入ったまま投げられてあった。彼は、正松と組み打ちをしていながら財布を投げ出したのだろう。村人は勘四郎の死を惜しみ、彼の霊を弔うために地蔵様をたて、「勘四郎地蔵」としてその供養を続けている―。