月舘町伝承民話集 -023/200page
山 神 碑
下手渡の天平の奥に樋ノロというところがある。今から140年程前の天保年間のはじめころ、下手渡藩 の若い武士四人、酒盛りのあげく狐狩りの相談をはじめた。「おれの腕前を見せてやる!」「いやおれの鉄砲、 で狐の親玉を討ちとって狐汁でもやろう!!」などとぼやきながら、文珠様のところを通って月館の手渡越戸 に通ずる小道を山へ山へと入って行った。夏の盛りなので、はだぬきをして鉄砲をかつぎ、腰には大小のわ きざしをたばさんで山道を歩いて行ったが、目ざす狐の姿どころか鳥一羽さえ現れて来ない。
四人の若い武 士は酒の酔いもまわってひどく疲れ果ててしまった。「一休みして行こう」としばらく休憩したが、方角がわ からない。「大したことはないさ」と先輩格の武士が腰を上げて「おれについて来い!!さすがの狐もおれらを 恐れて逃げたらしい」などと言いながら山道をどんどん行ったが、小道もなくなって全く松林の中にまぎれ 込んでしまった。そのころはもう夕日が西に傾いて、どこか遠くで笑っている様な人声がきこえた。四人は 足早にその松林を声のする方をたよりにどんどん歩いて行った。しかし松林は、続くばかり鳥も兎も狸もな にも現れない。四人は、方角を忘れ全く山中深く迷い込んでしまったのだ。
そして夕陽は落ちて、くらいや みがやって来た。さすがの気の強い若い武士も寂しくなって来た。「オイ帰ろう!!今日は運が悪かったのだ。 家でも心配しとるだろう」という者があった。さつきまで腕自慢していた先輩格の武士も全く不気嫌にだま りこくっている。帰るにしても道がない。四人は鉄砲を肩にかついで松林の雑草の中をさっき歩いて来た道 を求めて歩き出したが、暗いやみにさえぎられてどこがどうなのかさっぱり見当がつかない。とうとう四人