月舘町伝承民話集 -032/200page

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周 防 様 の 由 来

 布川の茶畑から東大飼へ通る道がある。昔ここは椚塚といって三軒の農家があった。どの家も豊かな生活 をしていた。このあたりは、静かな山にかこまれて田んぼもあるし日当りはよいし、みんな助け合ってむつ まじく暮していた。今から二百年程前であろうか。無宿者の旅僧がこの部落にやって来て、無理に一夜の宿 を頼んだ。部落の人々は、それは、かわいそうだと思って、その旅僧をとめてやった。旅僧は初めはおとな しい良い人柄の様に見えたが、二三日もこの部落にとまり込んで、ほかへ動こうともしなかった。そして、 日頃好きな酒を出せと農家の主婦にせがんだりした。宿の主婦は困ってしまった。主人と相談して仕方なし に酒を出してもてなした。

 旅僧は周防といって諸国を巡って歩いて、占いやまじないをしながら人々からお米や金をもらって歩いて いた。そしてこの部落の人々がとてもお人好しなことを見抜いて、どこにも行こうとしなかった。そして毎 晩酒をのんで、気にくわぬとあばれるようになった。そこで、部落の三人のだんなたちが集って、旅僧にど こかに行くように交渉をした。旅僧はとてもおこり出して、「火をつけるぞ。」などと、どなり散らしたりし た。部落の人たちはみんなこの旅僧を恐れ出した。「名主にお願いして、何とかほかに行ってもらうようにし よう」ということで三人連れだって名主や組頭にお願いした。しかし、旅僧は狂人のように酒をのんでは、 悪口暴言をしてあばれ回った。名主も組頭もこの旅僧をもて余した。部落の人たちはがまんが出来なくなっ た。「このままでは、私らはどんなたなるかわからない。いっそ、あの坊主をやってしまう方がよい。」と考


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