月舘町伝承民話集 -039/200page

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 村では、夜明けと共に大さわぎとなった。今まで巫子として主勝と一緒に神につかえた娘がいなくなったの だ。静かで、平和の村だった下手渡は、村中の人たちが集って川べりをさがしたが、巫子の姿はとうとう見 つからなかった。やがて半年すぎた頃、大雨が降って広瀬川は大洪水になった。その時、下手渡だけは全く 洪水の被害は出なかった。

 それから間もなく広瀬川の川下で、腐れかかった娘の死体が浮き上った。たしかに巫子の死体だったに違 いない。そして、主膳もその巫子の後を追う様に広瀬川に身を投げて死んだ。それから下手渡の人々はしあ わせの暮しが長く続いた。今でも主膳の住んでいた屋敷跡があり、その地名も北ヵ作といっている。また、 娘が身投げしたところを巫子が渕といって村びとの心の中にいまも悲しい物語として伝えられている。


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