月舘町伝承民話集 -085/200page
がとおされ生埋め作業は終った。その日から七日七夜にわたり静かな山合いから、かすかな鉦の音が聞えて いたが、七日目の深夜ついに音は止み婆さんの一生は終ったという。村人たちはこれを憐れみ、お参りのた びごとに、地上に出た竹の口から水を注いでやったという。
やがて、その日から三年を過ぎた晩秋のある日、かの生埋めをした武士がこの墓を訪れてきた。そして武 士はやおら深々と頭を垂れ
「婆さん本当に申し訳のないことをしてしまった、仇は別人だった。婆さんを無 実の罪でむごい殺し方をしてしまった」
と涙を流し罪を悔いたという。その後武士は、婆さん供養のために 墓のある御代田椚平というところにお堂を建て薬師如来像を祀り懇ろにその霊を弔ったということである。 この薬師堂は、今も椚平地内に在る。また婆さんに水を注いでやったという井戸にも前椚平というところの 奥に残っているが、これは「死水だから」といって、一般の人は飲んではならないと今でも言い伝えられて いるということである。