月舘町伝承民話集 -088/200page
蛇にねらわれたはたおり娘
むかしむかし、機織りの上手な娘がいたんだどぉ。朝はやくから夜おそくまで、トンカラリトンカラリと 機を織っていたんだどぉ。
ある晩、いっしょうけんめいに織っていると、雨戸を少しづつ開けるものがあると思っていると、障子に 男の影がちらりとうつったどぉ。そしてかすかな声で
「開けてくれ、忍んでやってきた。」という。
娘はその 声を聞いてどんな男が夜ばいにきたかと、そっと障子を開けたんだどぉ。ところが目のさめるような美男子 で、
「なあ、これから毎晩あいびきにくるからだれにも言ってはならねいぞ。」
と機を織る近くにきて、娘と親 しげに話をして帰っていったんだどぉ。娘はその男の姿が目にちらついて、それから夕方になるとそわそわ 心も空になったんだどぉ。毎晩こうしてあいびきが続いたんだどぉ。
そうしているまに娘の血色がすぐれな くなったのに気づいた家の人は、何かあるとこっそり戸のすき聞から、機を織る娘の部屋をのぞいたら、娘 は親しげに話をしているがだれもいない。みると一匹の蛇がきりきり機場をまいて、時折り舌を出している のが見えたんだどぉ。
「これは娘の命があぶない。蛇にねらわれている。」
そう思って、この仲をさいて蛇を 遠ざける工夫はないものかと、あれこれ思案したんだどぉ。ところがそのときはもうとっくに二人の仲はす すんでいて、ぬきさしのならないところへ追い込まれていたんだどぉ。ある晩、娘の寝床に忍んできた男は、 娘をくどき落して二人でいいかわし、娘は男のたねを宿していることに気づいたんだどぉ。娘はお腹が大き くなり、ついにどっと床に寝たっきりになってしまい、はては物も食べずに思いにふけっている様子。