月舘町伝承民話集 -102/200page

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殿様におとぎ話を聞かせた子どものはなし ニ

 むかしむかし、たいへんおとぎ話の好きな殿さまがお城に住んでいたんだどぉ。家来どもは夜になると殿 さまによばれて、むかしばなしをしたが、長続きがせずに殿さまは閉口しておられたんだどぉ。やがて領内にお布告をだして 
「だれぞ殿さまに満足におとぎ話をした者にはごほうびをくださる。」ということになった んだどぉ。
すると城下町のそとの山に住む一人の子どもが召し出されて城にゆくことになったんだどぉ。子 どもは殿さまの前につれてゆかれてたっびらに手をついたんだどぉ。殿さまは
 「面をあげい。家来に聞いた が、たいそう利口な子どもとはその方か。一つ今晩からわしに長い話をしてくれ。」
殿さまは上きげんにこう いうと、家来に菓子などもってこさせてもてなしたんだどぉ。

 夜になってその子どもは何を話すかと、殿さまや家来どもは百匁ローソクのゆらぐ座敷にかたつばのんで 待っていたんだどぉ。子どもはこんな話しをしはじめたんだどぉ。
「あるお城の石垣の小さな穴から、一匹の 蛇が春になってはい出し、かま首もたげていたどぉ。それを見つけた子どもは 『どれほど長いか一つためし てみよう』と手づかみでかま首をつかんで、その穴からとり出したんだどぉ。小さいのですぐ尻っぼが出る かと待っていると、その蛇の長いこと、にょろにょろ、いつまでつかみだしてもきりがない。にょろにょろ。 出るわ出るわ。今日もにょろにょろ、あしたもにょろにょろ。あさってもにょろ.にょろ。さてさて困りきっ てやめる分にいかなくなって、十日たってもにょろにょろ。二十日たっても、一ヶ月たっても同じことをくり かえすばかり。」
子どもはもっと続きを話そうとしたら殿さまはこうよびとめたんだどぉ。
「ウーム。感心な子 どももあるもんだ。こんなに長い話しではわしもかなわん。参った。早速思う存分ごほうびをとらすぞう。」


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