月舘町伝承民話集 -101/200page

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ばか殿様にごちそうするはなし ハ

 むかしむかし、ばか殿さまがいたんだどぉ。毎日ぜいたくな日を送っているのにあきがきて、それよりも もっとうまいものを食べたいと、領内にお布告をだし
 「わしの気に入ったごちそうをしてくれた者には、ウ ンとごほうびをとらせてつかわす。」ということになったんだどぉ。
それを聞いてみなの衆はほとほと困って しまったんだどぉ。
「あのばか殿さまは酒よさかなよとうまいものを食っていべい。わしらのような貧乏百姓 にそんなお布告なんか、どだい無理というもんだ。」「そうだ、そうだ。」とだれも殿さまをよぶといいだすも のはいなかったどぉ。
ところが一人たいそうとんちのいいものがいて、
「そうだ、あれがいい。」とみんなに耳 打ちしたどぉ。みなの衆もあいづちを打ち、いよいよ殿さまをよぶことになったんだどぉ。殿さまもたいそ う上きげんでやってきて、
「こら早くうまいものを座敷にはこべ。」と居催促。
殿さまは今はこんでくるか、今 はこんでくるかと待ったが、百姓たちは 
「いまうまいものをとりよせ最中で少しお待ち下さりませ。」
となか なか膳をはこぶ様子がみえなかったんだどぉ。もうお昼もすぎて殿さまのおなかもペコペコで、つばをのん で我慢して待ったどぉ。そうして待つうちにやっと膳がはこばれてきたんだどぉ。どんなうまいものを百姓 どもは食わせてくれるのかと殿さまは、さっそくお椀のふたをとったどぉ。
麦めしに葉っぱ汁にたくあんづ け。殿さまは一目見てたいそう怒ったが、あまりに腹がへっているので、百姓どもといっしょにこの麦めし に初めてはしをとったどぉ。ところがかめばかむほど味がでてくるし、葉っぱのみそ汁も今まで食ったこと のない淡白なうまさに初めて舌鼓を打って
「百姓どもはぜいたくな食べ物づくめでくらしているのう。こん なものを年中わしにも食べさせろ」
と、たいへんごほうびをとらせたんだどぉ。


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