月舘町伝承民話集 -104/200page
とんち小僧の知恵くらべのはなし
とんち小僧の知恵くらべのはなし イ
むかしあるお寺に、えらい坊さんが小僧と修業をしていたんだどぉ。この小僧はたいへんとんちがあって、 よく坊さんと知恵くらべをして負けなかったんだどぉ。あるとき坊さんはだん家の法要に招ばれて行って帰 りみち一つ小僧を困らしてやろうと思って、通りがかりの橋を渡ろうとしたとき
「小僧、ここでお前と知恵 くらべをしようか。」と、そういったんだどぉ。
「おしょうさま、何でござりますか。」と小僧。
「そうだ、わしが 一つ制札をここにたてる。『このはしを渡るべからず』となあ。そうしたらお前ここを渡れるか。どうじゃ。」 そういって、からから笑ったんだどぉ。
小僧はしばらく思案していたがうなづくと
「おしょうさま、わたっ てみせますべい。」とつかつか歩きだすと、橋の真ん中を渡ったんだどぉ。坊さんは
「小僧、参った。今日は おしょうの負けじゃ。」と小僧のとんちに舌をまいたんだどぉ。橋と端のことばのあやのかけひきだったんだ どぉ。とんち小僧の知恵くらべのはなし ロ
むかしむかし、このえらい坊さんと小僧がまた別のだん家の法要によばれて行ったんだどぉ。
「小僧、知恵 くらべをしようかなあ」
「おしょうさま、何でもやりましょう。」
そうした問答のあと、無事法要もすんで、ごち そうが出、お膳には精進料理ではあったが、だん家の心づくしのうまいものが出たんだどぉ。さて食べよう とするとき、坊さんは小僧にいった。
「小僧、お椀のふたをとらずに食べてみよ。」
これにはさすがのとんち小