月舘町伝承民話集 -105/200page

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憎も困りきって、「おしょうさま、今度は参りました。」と手をついたんだどぉ。
さてごちそうを食べたあとお椀に湯をついでもろうことになると、小僧すかさず坊さんに向って
「おしょうさま、お椀に湯をなみなみいっぱいついでくださいませ。」
「何するのじゃ。」
そうして小僧はいっぱいつがせていった。
「おしょうさま さてそのうえに湯をこぼれないようについてくださりませ。」
今度は坊さんが 「参ったなあ、小僧に一本とられた。」 とあやまったんだどぉ。

庭を掃く小僧のはなし ハ

 むかしあるお寺にたいへん知恵のすぐれた小僧がいたんだどぉ。秋もふかくなって、寺の庭の泉のほとり や繁みの植木も紅葉となり、毎日落ち葉が風吹くと散ってきて、掃いても掃いてもつもるばかり。そこで坊 さんは
 「小僧、今日も風が吹いてまた落ち葉が庭いっぱいになった。お寺はちり一つとどめておいてはなら ない。ごくろうだが掃いてくれよ」といいつけたどぉ。
小僧は、いちょうやかえでなどのあかやきいろの美し い落葉を掃くのが惜しくて、だまって見ていたが、何思ったのか庭木のところへ行って、木をゆすって落葉 をいっぱいしきつめ、おしょうのところへ行っていうに
 「おしょうさま、掃いて参りました。」そういったん だどぉ。
おしょうが書院の読書からたって縁にたってみると、庭いっぱい落ち葉ばかり。それが夕日の沈む 少し前とあって、何ともいえぬ美しい情趣となっていたんだどぉ。それを見ておしょうは感に堪えぬように 見入ってこういったんだどぉ。
「感心。感心。よくはいてくれた。お前はなかなかよくものを見るなあ、末恐 ろしいものになるわい。」と。この小僧はあとで名高い坊さんになったんだどぉ。


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